金髪碧眼の青年
 



ソラが「サボる」とナイトにわざわざ言ったことには理由がある。

現在、廊下を走るソラとジンにとって「サボり」は「遊び」である。彼らが行う遊びはいくつかある。
勝手に学園の外へ出掛けたり、校内でかくれんぼをしたり組み手をしたり。そしてもっとも2人が楽しいと思うのはかくれ鬼ごっこだ。

ただし、逃げるのはこの2人だ。
追い掛けるのは、生徒会または風紀委員。
ごくまれに教師。



「今はまだ来ないよね」

「ったり前だろ。隠れ場のほとんどがあいつらにバレてるから、また新しく探さねぇと…」

「でもでもさー、あの人たちって頭いいから案外、古典的なのには弱いかもよ?」

「つまり?」

「倉庫へレッツゴー!」



ソラたちはいままで決まりきった場所ではなく、分かりにくい場所にかくれていた。
例えば時計塔のてっぺん。天まで届くかに見えるほど巨大な塔だ。
例えば地下。
この学園にはいくつも謎の地下がある。

絶対に校舎の中にいない2人だが今回は校舎へ。
この学園には倉庫がいくつもあり、そのうちの1つが校舎の中にあるのだ。

倉庫へ走る2人があともう少しで目的地が見えるというとき。倉庫の前に誰かがいるのだとソラがジンに伝えた。



「……誰だ、あいつ。私服だけど…」

「さぁ?あ、でも僕どっかであの人を見た気がする…。どこだっけ…。」



倉庫にいるのは金髪の男。
レイカと同じか少し歳上の外見で、端正な顔立ちだ。片足に体重をかけて、手を少し長めの上着のポケットに入れている。
髪のサイドの一部が線のように黒く染めてある。

誰だっけ、と頭を抱えるソラと見守るジン。
そしてその金髪の人が気配に気付いたのか、ソラたちの方を見た。

ビクリとソラの肩がはねた。



(………今、目が合った…!?)



金髪の人は2人に近付き「何をしてるの?」と声を掛けた。
ジンは一瞬どう返事をすべきか悩んだ。サボっている、と素直に答えようとするも相手が何者か分からない。教師や生徒会の関係者であれば捕まってしまう。



「僕、保健室に行きたくて…。」



ジンの斜め下から聞こえた中性的な声はソラのもので、よくある嘘を吐いた。



「保健室って東館にあるよね。ここ西館だけど。」

「……うぐっ…」

「これから行くんだよ!!つかどこを歩こうが俺らの勝手だろ。」

「まぁなんでもいいけど、早く隠れないと生徒会とかに見つかっちゃうよ?」



ソラとジンが硬直した。
そしてヒソヒソと耳打ちを始める。



「(なんか嘘だってバレてるよ!?)」

「(チクられたらまずいよな…)」

「(どうする!?証拠隠滅のためにシメる!?)」

「(それはそれでまずいだろ!!)」



2人が話す間、金髪の人は暇そうに欠伸をして「じゃあね」と立ち去ろうとした。



「「まてまてまてまて!!」」

「……何」



行く手を2人がふさぐと金髪の人は機嫌が悪そうに少し低い声を出した。
かまわずソラは「年貢の納め時だ!!」と叫んでジンに「セリフが違ぇよ!」と言われ口を塞がれた。



「俺は見た通り私服だし、ここの生徒じゃないよ。それに教師として働いてるつもりでもない。」

「……じゃあ何者なんだよ」

「それを知って君たちはどうするの?」



金髪の人はそれだけ言い残して去っていった。
会話を途中で切って去った金髪の人の意図が分からず2人は首を傾げた。