いざ、
 


「信仰を失った島周辺は気候が不安定。突然津波が起きたり、竜巻が起きたり、あられが降ったりするから気を付けること。」



島に入る唯一の橋の前でツバサが僕たちにいくつか注意点を言う。
暇人なのか、ツバサだけが送ってくれた。ボス一人が出歩くのは危ないけど、ツバサの組織はとくに気にする様子はない。ツバサが不死だからなのかも知れないけど、礼儀とかは大切だよ。



「勝手ながら君たちに発信器を付けさせてもらったから。取らないでね。
あとソラ。一人で魔女に挑まない事。」

「う、うん」

「じゃあ、武器の確認をしたら行って。ぶっちゃけ魔女を生きたまま捕まえる事ができればいいから。目玉潰したり手足を切り落としてもぜんぜんいいから。生きてれば。」



問題発言だ。
ツバサは涼しい表情でそれを言う。
聞いているだけならまだいいけど、想像すると…、きもちわる…。見れたものじゃないよ。



「じゃあいこうか」



エテールが踵をかえしてブルネー島へ向かう。それに続いてナナリーがツバサに頭を下げてエテールの後ろに付いていった。



「じゃあ行ってきますねツバサさん!!」

「じゃあ行ってくるわ。ツバサも頑張れ」

「はいはい。でもここで仕事サボってれば口実はたくさんある。リカとサクラも何も言わないでしょ」



ツバサにブンブン手を振るミントとそれを放置するヒョウも橋へ。僕はツバサにただ一言「いってきます」と言った。するとツバサはふざけて「門限は5時だから」と笑った。














「うわ、懐かしい」



崩壊した建物が並ぶ町を僕たちが歩く。崩壊していない建物も、廃墟状態。
だけどここで僕は生まれた。懐かしい空気、懐かしい空。海の匂い。

いつもここを歩くとおばさんがミカンをくれたり、教会のシスターさんが僕に笑顔であいさつしてくれたり。

順番に懐かしい記憶が浮かんでは消える。



「魔女どこにいるんだろーな」



ヒョウが呟く。
ちなみにナナリーは町全体が見える高台に行っている。そこから超遠距離で封術を使う。一人で大丈夫なのかな、と若干心配。



「手分けしちゃいましょうか。一時間後にここに集合ってことで。」

「でも少人数で動くのは危ないんじゃないかしら」

「万が一戦闘が行われれば音でだいたい分かるでしょ。そしたらそこに向かえばいい。戦闘が始まったら無駄に大きな攻撃をすればいいし。」

「じゃあそういうことで!」



エテールやシャトナ、レオっていう大音量の攻撃が放てるひとがいるしね。それに僕には能力もあるし。

ミントがぱん、と手を叩きエテールとヒョウを連れて両手で手を振った。
僕も全力で手を振り返す。



「んで、どこに行く?」

「海岸!」



レオの問いに僕がすかさず答えて、シャトナが賛成。僕の意見通り海岸へ行くことになった。











「え?」

「ツバサさんとノーム様の考えなんです。目的は知りませんが、なるべくソラさんを魔女に近付けるようにって。」

「今回は何を企んでるんだか。しかも嫌いなノーム様を手を組んでまでしたいことがかるのかねー」



ソラたちと別れたミントたちはエテールに種明かしをしていた。エテールは驚いたのか、ぽかんとしている。



「ナナリーさんもノーム様に言われてると思いますよー。」



ミントが被っているフードの調子をととのえながら高台に目をやる。
あまりにも遠くて人がいるのかわからない。
ヒョウは涼しい顔で「多分、大地の組織で進められてる……」とそこまで言って口を閉じてしまった。



「まあ、私たちは何もしなくていいって事です。」



ミントは言うと、安心させるために笑った。エテールも「ボスたちの考えならどうしようもない」といって笑顔で返す。
そのなかに潜んでいた黒い部分を隠して。

炎、大地だけではない。風も今回仕掛けをつくっていたのだ。次のステージへすすむ階段を。