お墓参り
 

「ソラ…」

「じゃあ僕はレイカとちょっとお話するからルイトでてけー!ルイトは外!レイカは内!」

「節分かお前!!」

「またねージン!」

「おう、またな。オラ行くぞルイト!!」

「引っ張んな!!」

「あぁ!?じゃあどうすんだよテメェ」



ルイトはジンにひきずられながら僕の部屋を出ていくと、僕とレイカの二人っきりになった。

レイカはまっすぐ僕を見ていて、すぐ悲しそうに視線をそらした。まともに見たくない。



「ソラが言うお墓参りの意味は、私たちと同じ意味なの?それともブルネー島の……」

「さぁー、どっちでしょーか。」



「お墓参り」
ブルネー島の人間にとって、その意味は他とは違う。
僕たちにとって、お墓はこの世とあの世が曖昧な空間とされている。
曖昧な空間だから、近付いたら死者に肉体を取られて自分の魂を喰われる。そう言い伝えられてきた。

実際、僕も島から出て別の文化に触れるまではそれを信じて疑わなかった。

だから僕たちはお墓参りをしない。死者を土に埋めるのは専門の職業の人だけ。お墓を掃除したりするのは専門の職業の人だけだ。

だから僕たちが「お墓参り」を使うのは「死ぬ覚悟をした」ときだけだ。



「ソラ、誰を捕まえるの?」

「魔女」

「ええっ!?う、嘘!?」

「ほんとほんと!……大丈夫だよ。」



レイカがおろおろしていて見ているこっちは面白い。
僕はレイカを安心させようと笑った。



「僕は、絶対にここへ戻ってくるから。」



今日、シングとミルミはいない。

何かで名家のシングの家は今日忙しいらしい。本家へ戻らないとって言って僕が集会に言っていた昨日にシングたちは長期休暇の一足早く学校を休んだ。



「絶対?」

「うん。だから何も不安にならなくても大丈夫だよ。それにメンバーの人たちは強いのばっかだし。」

「ソラは、精神的に大丈夫なの?」

「まっかせてよ!いざというときはシャトナとレオが止めてくれる。」



歯を見せて笑うとレイカはそっか。と微笑んだ。

ごめん、空元気なんだ。僕。バレてるのかな?



「じゃあ僕は明後日の準備するから、また明日!」

「うん。無理しないでね。」

「……大丈夫。」



レイカが部屋を出ていく。
ぽつんと僕だけ取り残された。



ごめん。

本当は怖い。

島に行くことが怖い。

具体的になぜ、と聞かれれば

「わからない」と答えるだろう。



「どうなるんだろう…」



魔女の事は憎い。
僕が殺すはずだったお姉ちゃんを殺した。
僕にあるかもしれなかった感情を奪った。


大切なルイトたちを殺せば何か掴むかもしれない。けど、積み重ねてきた絆をもう壊したくない。

誰かに恨まれるのはもうたくさんだ。

魔女を捕まえれば僕の"呪い"が解けるかも知れないんだ。

それで、十分。



(まあでも、魔女に会ったら正気でいられるか分からないけど…。)



僕はため息を着いて、クローゼットの奥にある妖刀を取り出して、腰に巻いているホルダーから銃を二丁、サバイバルナイフを取り出してベッドの上に置いた。いや、もう、投げつけた。



「………うん。やっぱ妖刀だけ持ってこ。」



ずっと考えてたけど、ブルネー島から付き合ってるこの妖刀だけを持っていこう。

皆殺しの夜に、教会で見付けたこの妖刀。
今の僕はこれがあるからいる。

ならば明後日持っていくべきなのはこの妖刀だ。



死の覚悟して、明後日僕はもう一度あの土を踏む。