魔女捕縛任務員
 


「…ルネー島………つ」

「……魔女…」

「…から…………に」



暗い。光がまったくない。
その外側から僕が知っている声がいくつも降ってくる。誰の声だ?ていうか、こんなに近くから聞こえるのにどうしていつも通りにスッと頭に入って来ないのだろう。
その中に含まれたいくつかの単語に、全身の血が脈をうったのを感じた。



「ナイト、シャ…ナ、…オに受けてもら……」

「ああ、そう………いいか……」

「我からも何人か出…う。」



だんだんハッキリしてくる声。

僕の意識も覚醒していく。

するとまず始めに感じたものが背中いっぱいにやわらかい触感と自身の重さがある。



(ああ、僕はどこかで寝てるんだ。)



なんとなくそう思った。
けど、ここはどこだろう。
僕の中で一番新しい記憶は……物置小屋で、侵食を受けて…。あ、そこから記憶がない。
ならばここは物置小屋かな。

あれ、じゃあこの声はなんで……



「あ…」



持ち上げることができたまぶた。一番初めに視界に入ったのは誰かの手。腕をたどるとその先はサクラの顔だった。意外な人物で、一瞬だけ目を丸くした。サクラに見られたかな?

そう考えていたら、いつものつまらなさそうな目とバッチリぶつかる。



「……えっと…」

「ウンディーネ様、起きましたよ。」



戸惑う僕を無視してサクラは僕の頭上に目をやる。頭上にウンディーネ様がいるのか!?と起き上がろうとしたがサクラではない別の人の手によって頭を押さえ付けられた。
誰だ、と再び腕を辿る。



「……?」

「安静に。」



ナイトの温かい手だ。

僕はなんか納得いかなかったけど、取り合えずナイトの言うとおり大人しくすることにした。

頭だけを動かすと、談話室のテーブルを囲うようにしてウンディーネ様以外の各ボスが座っていた。集会は終わったらしい。

しかもツバサ以外は真剣そうな表情で話している。



「大丈夫かソラ!?」

「ウンディーネ様、心配かけたみたいで…。大丈夫ですよ。」

「なにか違和感とか…」

「違和感?うーん…。目がおかしくなったのかなってくらい。視界が狭いんです。能力には影響ないみたいですけど…。」



僕がいうや否や、ウンディーネ様は「私のソラが!私のソラが!」と小刻みに人形を震わせていた。



「え、えっ!?どうした…んですか!?ウンディーネ様!?」



僕もどうしようかと慌てはじめる。そんな二人をみてナイトが浅いため息をついた。



「ウンディーネ様、落ち着いてください。ソラも、慌てないで。」

「だかナイト!可愛い私の娘がこのような…っ!!」

「ウンディーネ様の娘じゃないですよ、ソラは。というか本当に落ち着いてください!」

「ナイトはどうして冷静でいられるんだ!」

「私だって動揺してますよ!」



わーわーと珍しくウンディーネ様とナイトが僕を挟んで話す。



「あははっ」

「大人げない…」

「やかましいぞ。黙れ」



ツバサ、ノーム様、シルフ様が僕たちを見ながらそれぞれ反応を示す。
ナイトは恥じらいながら謝り、ウンディーネ様は「はっはっは」とたのしそうに笑った。



「で、決まったのか?」



リカがエテールとコーヒーを人数分持ってきながらツバサに聞いた。

ツバサが笑って「決まった決まった。」と言う。

何が?と僕が聞くと、リカがいつもと同じ調子で僕に言った。



「魔女クラウン・サラスリア捕縛の任務に就くメンバーを、だ。今回は4つの組織協同だ。」

「……ま、」



目を見開く。
ドクンと心臓が反応した。
左腕かが脈をうった。
左目が痛くなった。

起き上がるが何も言えず、呆然としていた。



「魔女の居場所がわかったんだよ。だから捕まえようって。各組織の適任者を何人か出して任務を行うの。」



エテールが、僕に説明をした。
僕はその言葉を受け取り、そのことについて話していたであろうボスたちを見る。



「オリジナルは任務に就いても衝動で魔女を殺すかもしれない。任務は殺すのではなく、捕縛だ。
そのことを踏まえてオリジナルは任務に就きたいか?」

「はい!!」



頭で考えることなく、条件反射で僕はノーム様に言った。