利益か損益、損益か利益
 


「んなの都合よく俺が持ってるわけないじゃん。バーカ」

「貴様が包帯を所持していたんだろうが!!眼帯くらい持ち歩け!!」

「ねえ自分を棚にあげてないかな?この石ころが。トラックに踏み潰されろチビ」

「貴様ぁ……!!」

「おぉっと…っ。魔術の使用は無しでしょ。危ない危ない」

「ならば貴様が今手にしているその武器は何だ!?」

「武力行使に移項しようかと。」

「オレと同じだろ!!死ね!!」



わいわいと、ツバサとノームの話し声が談話室に響く。喧嘩はいつものことなのでほとんどの人が無視。

ナナリーとウンディーネだけは無視をしていなかった。

ナナリーはノームを見ながら赤面して「ショタ大好きショタラブっ」と個人的に幸せになっている。
ウンディーネは「元気がいいな、はははっ」と父親または祖父的空気を放っていた。

ちなみにウンディーネはツバサとノームよりも年下だ。



「黙れ。いつまで喧嘩をしているんだ。我が寝れんだろ。死ね。」



部屋のソファで偉そうにふんぞり返って座るシルフにエテールはあくまで優しくツッコミを入れた。



「シルフ様は起きててくださいね。寝ちゃだめですよ。
あと、今寝させるべきなのはソラですからね。」

「……我は眠い。」

「帰ったら寝ましょうね。」

「……我はなぜ起きている。」

「寝てないならですよ」



シルフはエテールに眠たい眠たいと主張するものの涼しい顔でエテールがかわしていく。



「……ぅ…」

「ソラっ」

「静かにしろ、ナイト。心配なのはわかるが落ち着け」



そのなか、シルフとは別のソファに横になって寝ているソラ。時おりうめき声をあげている。

ソラが寝ているソファを囲うようにナイト、リカ、少し遠目にエテール。そしてサクラがソラを見ていた。ウンディーネもツバサとノームを気にしつつソラの頭上に浮いている。


ボス達の集会が終わったのがつい40分前―――ツバサとノームは40分近く飽きずに喧嘩をしている―――。ソラが談話室を出たのは1時間以上前だ。

ボス達が補佐のいる談話室に戻った。そのときソラは居なかった。

さすがにおかしいと、ウンディーネをはじめ何人かが建物内を捜索したところ、物置小屋で倒れているのをウンディーネとナイトが発見。
ウンディーネも手伝いながらソラをナイトが談話室に運び、今に至る。


ソラの左手は"呪い"の文字と記号で埋め尽くされていた。

試しにナイトがソラの服を脱がせると、"呪い"の広がりは左手だけでなく、左肩にも続いていた。



「で、どうする?このまま放っておくわけにはいかないだろう。」

「だよねー。」

「鍵は魔女だろうな。」



リカが全体に問い掛けるといつの間に喧嘩を終わらせたのか、ツバサとノームが会話に参加していた。

サクラが無言で目線をソラから彼らが喧嘩していた場所を見ると、そこにあったテーブルとイスが木屑と化していた。



「むしろ捕まえる?そしたら俺たちにもメリットになる部分があるし。」

「ああ、いいかもしれない。オレは死属性について調べたいしな。」

「調べたいなんて生ぬるい事言って、人体実験したいんじゃないの?」

「何体かクローンを造って、そのクローンでやる。」

「わー、物騒な事で。」

「貴様に言われたくない。」



意見が珍しく良い方向に会う二人をわきに置いて補佐たちは真面目な話をしていた。



「まずは"呪い"をどうする?私の封術使っても一時的にしか侵食を止めれないよ?」

「一時的とは、どのくらいだ?」

「詠唱時間にも寄るけど一日詠唱して、6時間くらいかな…。」

「ふむ…」



リカは腕を組み難しそうな表情をつくると、どこから拾ってきた知恵か、ツバサが爆弾を投下してきた。



「詠唱補佐って知ってる?」