談話室、補佐に混ざり
 


ソラたちが入った談話室にはすでに三名がくつろいでいた。ツバサの補佐二人、サクラとリカ。ノームの補佐、ナナリーだ。

サクラは部屋に設置されているソファに寝て一人で占領していて、リカは椅子に座って大人しく読書。ナナリーは部屋のすみにある自動販売機を前にどれを飲もうか考えていた。

誰も彼もがほぼ未成年である補佐だが、各実力は確かなものだ。

炎や大地は頭脳派組織だ。
しかし水や風に劣らない戦闘実力を誇っている。


なぜかと聞かれれば、炎の場合。

ツバサが毎回の如く書斎から脱走を行っているため、自然と体力が身に付く。ツバサ自身が頭で考えるより実践で叩き込むタイプだ。また好戦的な性格も手伝ってか、ツバサが纏める炎の組織はいつの間にか実力が身に付いていくのだ。

サクラのように、我がボスの食材だけに猛毒を含ませたりする悪知恵も育つことがあるが。


逆に大地の組織は頭で叩き込むタイプ。
そもそも大地の組織は能力者がいない。端から頭脳派寄りの魔術師、封術師が中心になっている組織だ。体で叩き込むより頭で考えるほうがやりやすい。



「久しぶり」



エテールがその三人に声を掛ける。

サクラは一瞬だけ目線を寄越したがすぐに閉ざしてしまい、リカも「元気そうで何よりだ」と言ってまた本の世界へ。

ナナリーはぱっと振り向く。
ちょうどソラが補佐たちにお辞儀をしている最中だった。



「久しぶりー!って、あれ?この子…」



ナナリーがソラに気付いてなめまわすかのような目付きで見る。ソラは組織は違えど目上の人物に変わりはないので、いつもだしているふざけた空気はしまった。



「やっぱ着色間違えたかも…」

「え?」

「ああ、ごめんね。こっちの話。気にしないで。」

「……ねぇ、もしかして」「ソラ、立っていても疲れるわ。座りましょう」

「あ…、うん…」



ナイトが無理矢理話題を切って、読書に没頭するリカが居座るテーブルを囲むようにして座った。



「……なぜ私の近くに集まるんだ。」



明らかに嫌そうな表情でリカはナイトを睨む。体が幼いのにリカの睨む眼には、確かに迫力が含まれていた。

ナイトは一切怯むことなく涼しい顔をしている。



「いいじゃない。一人でいるとコミュニケーションがとれなくなるわよ」

「ふっ、ミントやヒョウと同じことを言うか。」



ポロリと仲間の名前を口に出すリカ。隠す必要がないと判断してもらしたのだろう。ソラは聞いたことがあるなー、とぼんやり考えていた。



「そういえばサクラはどうして寝てるの?」



仲間に対して人当たりがいいエテールが自然的な流れで聞く。



「昨夜も無理矢理ツバサの仕事に付き合わされて、疲労がたまっているのだろう。サボっていたツバサが悪いのだがな。
しかしサクラもサクラだ。よく毎日懲りずにツバサの食事に猛毒を含ませるものだ。」

「――どっ!?」



毒!?それってもう暗殺じゃん。
という言葉を呑み込んでソラは驚いていた。



「そういえば暗殺組織にいて喜怒哀楽がはっきりしてるのって凄いよねー」



頬杖をついているエテールはにっこりとソラに笑った。

それに対してソラは「別に凄くないでしょ。水の組織のほとんどの人そうだし。」と多少ながら皮肉を混ぜていうがエテールには一切通用しない。
ただ、皮肉には気がついているようだった。



「まだ僕は嫌われてるの?」

「きらい」



からからと笑いながら「酷いな」といった。ソラは自分がエテールのことを嫌う理由がこどもっぽいことを理解していたが、好きになるきはなかった。



「……あ、れ?」



ソラが突然気の抜けた声を出した。そして数秒後「トイレに、行ってくる」と呟いて席を立った。