報告会
 


「はい、久し振りー。ごま以外。」

「死ねジジイ。誰がごまだ。」

「我は眠い。即急に事を済ませろ」

「ははは、久し振りだなー」



窓が一切ない部屋。天井には馴染みのある蛍光灯は付けられておらず、部屋の灯りは蝋燭のみだ。
まるで怪談話をするかのような光景だ。

机を囲うようにツバサつまりサラマンダー、ウンディーネ、ノーム、シルフが座っている。

さっそくツバサはノームに喧嘩を売るような発言をして、ノームは苛々していた。



「えーっと、ああ、今回の司会ってシルフじゃなかった?」

「面倒だな。我は眠いというのに…。
ノームよ、貴様がツバサが根城にしている天馬学園を襲った件について報告しろ。」

「別にオレは襲ってない。」



面倒臭そうにシルフは欠伸を挟みながら司会をする。
シルフは集会中に寝ることがよくあるので、ツバサが本当はウンディーネである司会の番をシルフに回した。

これに関してウンディーネは何も言わないので別に怒っていないだろう。



「報告だ。今回の件は―――」



ノームが手短に説明を始めた。ツバサは事情をすでに理解しているので、先に配られている水を飲んだり手遊びをして過ごす。



「オレ、つまり現ノームの反対派が功を挙げようと低能の事をしただけだ。それにサラマンダーが利用されただけのこと。」

「大地の組織の教育方針おかしいだろ」

「なんだと貴様!」

「あ?事実だろクズ。テメェ、謝罪の一つも出来ねぇのかよ。」

「ツバサ、ツバサ。口調がずれてるぞ。」

「おや、失礼ー。」



ウンディーネの指摘を受けて、殺気を露にしていたツバサはいつもの調子に戻って水を一口含んだ。



「てか水入れたの誰?」

「我と貴様の補佐だ。」

「配ったのも?」

「他に誰がいる。」



サクラがまた毒入れやがった。というツバサの言葉は聴覚がいいノームだけに聞こえていた。
ツバサとの会話を終らせたシルフはノームに興味本意で質問をした。



「その反対派はどうした?」

「こちらは大地の組織だ。材料になったに決まっているだろ。」



あっさり、さも当然のようにノームは涼しい顔で言った。ノームは平気で人体実験を行うし、研究、実験のためならば手段を選ばない「狂研究者」だ。このような事態になれば反対派である人間には奴隷以下の扱いが待っている。

だが恐ろしいのはノームだけではない。
異名通り、ノームが「狂研究者」ならばシルフは「棺の管理人」としてウンディーネは「虚無の肉体」としてツバサは「ふざけた道化師」として、裏で何をしているのかわからない。



「では次にウンディーネ、"呪い"の侵食状況を」

「私よりもツバサの方がよく理解しているかもしれんが…。ソラの侵食状況は最悪だ。もう一ヶ月と持たないだろう…。本人もそれは重々理解している。」

「"呪い"に意識が現れたと聞いた。それに魔術も使用したそうだな。」

「本人と監視役をしているナイトからの報告では、意識は侵食影響で発生したものらしい。しかも人格はソラが殺した幼馴染みらしいがな。」



人の姿であれば悲しそうに眉を潜めるであろうウンディーネがそう言い、さらに続けた。



「魔術の方は不明だ。だがソラの中に眠る魔力が一時的に放出されたのだろう。多重能力者ではないはずだ……と、思う。」

「まぁ、そもそも多重能力者とは存在が確定していない。UFOと同等レベルだな。人間が抱く妄想だ」



ノームが鼻で笑った。ツバサは肘をついて「じゃあ次の報告はシルフだね」と笑った。



「我は魔女の居場所を捜したが、あっさり見付かった。」

「どこにいる?」

「ブルネー島だ。どうやって侵入したかまでは知らん。」