集会への
 


「……雨、だ」

「そうね。」



太陽から降り注ぐ光を邪魔する雲は、泣いた。ぽつん、ぽつんてソラの頬にぶつかり形を崩した滴は透明の線を描いた。

ソラの隣にはふわふわと宙に浮く手作りの人形。さらに隣にはナイトがいた。

宙に浮く可愛らしい人形から、誠実そうな男性の声がソラに話し掛けた。



「雨は嫌いか?ソラ」

「嫌い、じゃないんですけど………。今日の雨は嫌い。なんかムカつくんです。」

「あら、思春期の始まりかしら。」

「そうか…、ソラもとうとう思春期なのか…。」

「変なこと言わないでよナイト!!ウンディーネ様のテンション下がったじゃんか!!」

「あら、私のせいにするの?ウンディーネ様、元気出してください。ソラはまだ子供だから思春期はまだですよ。」

「子供じゃないよ!!」



人形、ウンディーネからクツクツと笑い声がする。ナイトは「そういうところが子供よ」と笑った。ソラは頬を膨らませてまだ反論する。

ソラとナイトの間に浮く人形はウンディーネ。水の組織のボス。暗殺組織のボス。そういえば彼のイメージは恐いものとなるのが普通であろう。

だがソラたちがボスのウンディーネは温厚な性格だ。肉体は奪われてしまったので人形に精神を宿している。



「あ、ついたついた!つきましたよウンディーネ様!」

「そうだな。疲れたからあとで水を飲もうか。ああ、走ってはいけないよ、ソラ」



ソラたちの目の前に立つのは小さなビル。10階になるかならないかくらいの大きさだ。
そこがソラたちの目的地。本日集会が行われる場所だ。

目的地にたどり着いたソラは今にも走りだしそうで、ウンディーネがすぐに制止の声をかけた。



「でもじめじめするから早く入りたいですよ!」

「慌てるな慌てるな。ははは」



のんびり構えるウンディーネを見てソラは「まあ、いっか」と走るのを諦めてウンディーネに歩調を合わせた。歩いてその建物に入り、ソラは体めいっぱいにクーラーの涼しい風を浴びた。



「すーずーしーいー!」

「風邪引くからこっちに来なさい」

「あーい」



ナイトに連れられてソラはロビーから離れてウンディーネと共に暗い廊下を歩き、エレベーターに乗り込む。

ウンディーネを集会が行われる部屋まで送っていくためだ。
エレベーターが作動して体がいつもより重くなる感覚を味わっているとすぐに最上階に着いた。

そこからまた廊下を進むとばったりと二人組に出会した。



「シルフ様、こんにちは。」

「こ、こんにちは」



ナイトに続いてソラが挨拶をする相手は風の組織のボス。
彼とその補佐はソラたちの姿を視界にとどめると、シルフの補佐、エテールが挨拶をした。



「ウンディーネ様ですね。こんにちは。」



にっこり、優しく笑うエテールとは反対に表情を変えず威厳が溢れるシルフにソラは狼狽える。



「お前がオリジナルか」

「は、はい。はい?え、あ…、オリジナル?」

「フン、聞いていないのか。まあいい。」



シルフはエテールに「ここまででいい。」と言うと、さっさと歩いて行ってしまった。
ウンディーネもナイトとソラに「私も大丈夫だ。先に休んでなさい。」と言って返事を確認すると空気を滑って行った。



「じゃあ僕たちは談話室に行こっか。」



エテールがソラとエテールに笑いかける。
白衣を羽織るエテールの外見は女性そのものだ。顔立ちも女性寄り。……そう、外見は。実際は女性ではなく男性。

ソラはエテールを好ましく思っていない。ソラも同じように性別を偽っているのだが、どうしても性格が好きになれなかった。

それに、性別を偽る理由がただの遊び心であるという点でも、納得できない。だからソラは「……ああ、うん…」と曖昧に返事をした。