大地の組織 ノーム
 


つい数年前に大地の組織のボスが替わった。
四大組織のボスはめったに変わらないため、心配な事がいくつもあった。



ボスが替わることになった理由の一つとして「暴君だった」ことが挙げられる。

前ノームは、今の、現ノームの父親だ。

父親のやり方に納得出来なかった息子……現ノームは、父親の元へ行って直接納得出来ない部分を言った。

激怒した父親は息子を監禁してしまった。監禁されていたときに現ノームは思った。

殺そう、と。

組織にいるメンバーたちは暴君ノームに耐えられず、次々に辞めていく現状。大地の組織はいつまでもつかわからなかった。
父親が簡単に"ノーム"の座を譲る訳がない。
しかしこのままでは大地の組織は壊れてしまう。無くなってしまう。
監禁から解放された直後に現ノームは父親を殺害。半ば無理矢理ノームの座に就いた。組織の人たちは、驚いていたが次第に現ノームを歓迎していく。

その頃からだ。サラマンダーと犬猿の仲になったのは。



―――前ノームが死ぬように仕組んだのはサラマンダーだ。現ノームの実力じゃない。



そんな噂が流れた。その噂はもちろん現ノームの耳にも届いた。負けず嫌いの現ノームは、定期的に行われる集会でサラマンダーに聞いた。

噂は本当か、と。

実際に現ノームには父親の死にはいくつかおかしな点があったのだ。


現ノームの話を聞いたサラマンダーは、歪んだ笑みを浮かべて噂を肯定した。

















「寝てしまいましたね」



真っ白な保健室に無機質な少女の声が響いた。

カーテンで仕切られた一つのベッドに眠る少年。いや、正確には少女だが。



「ソラ、急にどうしたんだろ…」



イヤホンをつけているルイトが寝ているソラを見ながら呟くような声で言った。

実際、彼は動揺していた。
いつも元気に振る舞っているソラが突然血を吐いて、いつもより青白い顔で苦しそうにしていた。

何が起きたのかわからない。


ルイトの問いに答える者はいなかった。
シングは唇を少し動かして何か言いたげにしていたが、言葉を発することはない。



「ソラっ」

「こら、落ち着きなさい。」



扉が前兆もなく開く。ルイトが驚いて振り返るとそこにはクラス担任の教師であるナイトと、同じクラスメートのレオが居た。

二人は寝ているソラに寄り、ナイトがソラの首に触れた。



「……よかった…」

「落ち着いてないのはナイトじゃんか。」

「心配してたのよ。落ち着いていたわ。」

「どうだか。
まあ俺は安心したし、よかった。本当…」

「突然悪かったわ」



ナイトはふとルイトたちに詫びた。
ルイトは「いえ、」と返事をする。なぜ二人がこんなにも慌てていて、ソラがここに居ることが分かったのだろう。と疑問に思ったが今は聞く雰囲気ではないな、と思い聞くことを止めた。



「ッソラァァァァァァーーーーー!!」



廊下からダダダダッと走る音と女子生徒の声が響いた。
直後、ナイトは別の出入口から「私は仕事があるからソラは頼むわ」と言い残して立ち去った。

レオは明らかに嫌そうな顔をして、保健室の出入口である扉を両手で抑えた。



「悪い、誰か手伝って!」
「……誰が来るんですか?」

「ソララブなやつ」

「……はぁ?訳がわからん」

「いや、助けてって!!Help me!」

「発音いいですね、レオ。」

「そうだな。」



ミルミとシングが我知らずと会話をしていた最中ガンッと扉を無理矢理開けようとする音がした。続けて「ちょっと!?誰よ閉めてるの!!開けなさい!!精一杯怨みを込めて暗殺してやる!!」という声。

それに反応してレオが声を張る。



「暗殺を公言するなバカ!!だいたい、ウンディーネ様の許可がないと駄目だろバカ!!」

「その声はレオね!?開けなさい!!ウンディーネ様に告げ口するわよ!!」

「嫌だ!!お前来ると騒ぐだろ!!」

「騒がないわよ!!保健室と図書室では騒がないわよ!!」



保健室の出入口にて、怪しげな攻防戦が繰り広げられる。

仕切られたカーテンの中でルイトは「すでに騒いでるし」と呟く。シングは溜め息を吐いて注意しようと口を開いた時だ。
聞き慣れた中性的な声が騒ぎに混じった。