図書館
 

「あれ?ルイトどこに行くの?」

「図書館。まだ読みきれてないし」

「うぇー。あ、待って待って!僕も行く!静かにするからついてっていい?」

「……まぁ、静かにするならいいけど。」

「やった!!」



下駄箱がある生徒用玄関までソラはルイトとシング、ミルミと一緒に来た。ルイトはスリッパを履くと教室とは違う方へ歩いた。

ソラも同行を許可してもらい、シングとミルミとは一旦別れる。



____________図書館



さすが情報組織のボス、サラマンダーが創立した学園。図書館には並々ならぬ本がきれいに整列している。
まるで兵隊のようだ、とソラはキョロキョロしていた。



(これって市民図書館より多いんじゃない…?)



うわー、とぼやく。
ルイトに椅子に座ってろ、と言われたのでソラは座った。

ルイトはあの兵隊の中へ消えていき、ソラは机に肘をついて「これってサボりじゃん」とつぶやいた。

数十分経って急にソラの横からドサッと重そうな音がした。



「うわっ。僕本嫌い」

「なにが『うわっ』だよ。嫌いならついてくんなっつの。」

「正論も嫌い」

「最悪だな。はい、調べるぞー。取り合えずソラも字は読めるだろ。手伝え。上から一冊ず」「ブルネー島は三年前に沈青事件が起きた島」



ルイトの言葉を遮ってソラが乱入した。ルイトは驚いて、ポケットから飴を取り出すソラを見る。

ソラはルイトにニッと笑って見せて先ほどの続きを喋る。



「ちなみに沈青事件とは、一人の子供が島の人たち、ろうりゃ…老若男女問わず全員殺した事件の事。
まー、そのせいで、信仰を無くした島はなんやかんやで沈みかけてるらしいねー」

「………」



ルイトが何も言えず、そのルイトを視界に入れないでソラは飴を口の中で転がす。



「ちなみに生き残りは三人。犯人を含めてね。そのうち一人はルイトじゃない?多分だけど。」

「三人?」

「うん。んで、三人のうち二人はすでに死亡。一人はギザギザに斬殺されてて、もう一人は撲殺。
現在ブルネー島は水の組織が管理してるよ」



って事以外、あんま載ってないと思うけど。

とソラが付け足した。



「あのさ、ソラ。実はさぁ…。俺、もう一こ記憶戻ってるんだよ」



ルイトは眉を寄せて少しだけ辛そうな顔をした。
いつも付けているイヤホンの位置を戻してルイトは机に肘をついた。

ソラは少しだけ考え、「どんな?」と聞く。



「女の子が殴られるところ。」



どこか分からないけど、暗い廊下を白衣を着た大人に連れて行かれるときに、通り過ぎる扉から音が聞こえるんだ。それは殴られる音で。
血が、流れて来るんだよ…。床て扉の隙間から。



「…ふーん。」

「シリアスな話だったのに!うっぜー。殺すぞガキ。」

「さて問題でーす」



ソラは右手をゆっくり振り上げ、ピッとルイトを指す。無駄に辺りはしぃんと静まり帰っていてルイトは唾を飲んだ。



「どうして君はその記憶から思い出してんの?」



答えようもない質問を飛ばしてた。
ソラはいつも以上に真剣そのものの表情をしていた。さらに纏う空気も一変し、ルイトは寒気を感じた。



「わけわかんねー。」

「両方とも沈青事件に関わりがあるんだよ。何かおかしいと思わない?二つとも、なんてさ。」

「……たまたまだろ。」

「かもね。」



指していた指を下ろして、いつもの調子に戻った。ソラはよいっしょ、と椅子から立ち上がった。



「じゃあ僕本片付けてくるねー」

「あーいい。借りるから。」

「まじでっ!?」

「黙れ。先に教室に帰ってろ。」

「んー」



ここでルイトはソラと別れた。ソラはスキップをしながら図書館を出ていく。その後ろ姿を見送ったルイトは頭の中を駆け巡る疑問を整理していた。



ソラのあんな表情、初めてみた…。

ブルネー島よりソラの方が気になる

今思うとソラは謎だらけだ。

もう衣替えの時期なのに未だに冬服を着ている

ソラのファミリーネームを知らない

出身地も分からない

それに…

なんで今日、俺の調べものに着いてきた?