隠事
「ええーーー!!!」
男の子とも、女の子ともいえない中性的な声が夜の女子寮の廊下に響いた。
消灯時間を過ぎたというのに生徒が寮内を歩き回っていると、寮を見回る教師が聞こえた方へ向かう。
「っバカ!」
叫んだ犯人のソラは、隣にいるレオに引っ張られた。 レオの能力は"光の屈折"だ。 ソラを掴んだレオは光を歪ませて自分達の姿が見えないようにする。つまり透明人間だ。
側にきた教師から隠れることに成功し、ふぅ、と安堵の息を漏らした。
「なんでシャトナ寝てるの!?なんで鍵閉めてるの!?まだ23時だよ!?」
「鍵閉めて寝るのは当たり前だっつの。つか、シャトナはまだ寝てないんじゃね?寮についてる風呂に入ってるとか…」
「レオが風呂に突入したらいいよ。」
「あぁ、でもシャトナは夜に活動するタイプだからな…。今日は任務入ってたりして。」
「無視?」
「ナイトは確認のためにツバサん所に行ったしな。鍵を開けて貰うのは無理かも」
「無視ですねコノヤロー!」
ソラが足蹴をしようと右足を振るがレオは避けてしまい、それは失敗に終わった。
とある女子生徒の寮部屋の前で会話をする男子生徒2人。明らかにあやしい。 片方は男装をしているだけだが、それを知っているのは学園でほんの数名。
「どーすんの?大地来ちゃうよ」
「つかお前は殺しに行かなくてもいいのかよ」
「それが聞いてくれよお兄さん。妖刀を取りに行きたいんだけど部屋にはシングとミルミが泊まってて行けなくて」
「……お前、どうやって部屋から出たんだよ」
「自動販売機のジュース買って来るって。」
「じゃあソラは一時間以上ジュースをどれにするか悩んでることになるな」
「ウケるw」
「記号やめろ」
「あ、マスターいましたよ。ソラ」
2人の会話から、ありえない女の子の声が乱入してきた。 しかも「マスター」という女の子は学園でも一人だけだ。
「げげっ」
廊下の暗闇のなかをソラがみると、確かにソラの見知った人物が2人こちらに来る。 ソラのもとにやってきたシングとミルミはさっそく何やらソラに言い始める。
「ソラ、ジュースを買うと言っていたよな?」
「う"…」
「どうして女子寮まで来ているのでしょうか。嘘はいけませんよ」
「だって…。レオ助けてーっ」
「レオも共犯か」
「え、俺ら悪役?」
「とにかく部屋に戻りましょう。訳はそちらで聞きます。」
「やばい…って…」
「…冗談じゃねー」
ソラはガッチリとミルミに手を繋がれ、レオは降参したのか素直に連行されていく。
寮に戻るまでの道でソラとレオは2人に叱られてヘトヘトになっていた。
レオは自分の部屋に、ソラはシングとミルミを連れて自分の部屋に帰る。
ソラは寝るときの服装になり、ベッドに入った。入れられた、の方が正しいが。
「おやすみなさいソラ」
「良い夢を」
「うん…おやすみ。良い夢を……」
ソラは色んな不安を混ぜながら眠りについた。 ソラの寝息が聞こえ出した24時。 その時にはまだシングたちは起きていた。
「とくにかわった様子はないな…。考え過ぎだったか…」
「ソラがマスターと同じというのは無理な考えでしたか…」
「ソラに直接聞いてしまうか。『あなたは"呪い"ですか』と。」
冗談混じりに、シングが言う。ミルミは「そうですね…」と考え、何秒かしたあとにまた口を開いた。
「もう衣替えであるにも関わらずソラは未だに長袖を着用しています。これは訳ありでしょう。先生たちも黙っているではありませんか」
「だよな…。もしソラが"呪い"となると俺が幼い頃と同じように左腕一面に文字と記号が刻まれていることになる。」
「はい。」
「コソコソと仲間を調べているのも、いい気がしない。明日にでも聞いてしまおう。違っていれば誤魔化せばいいだろう」
「そうですね…」
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