プロローグ
人工の光と天高くから降る儚い光のみを頼りに、暗闇を1人の女性が走り抜ける。 足元は僅かに見えるだけであり走る先はただ暗く、自分が何処へ向かっているのかすら分からない。
女性はただ、後ろから聞こえる足音から必死で逃げる。
仕事の帰りで格好はスーツ。正装であるこの服の動きにくさに腹を立てるが、気にしている場合ではない。
「待ってよ、お姉さん」
後ろから聞こえるのは幼さが残る子供の声。男の子とも、女の子ともいえない中性的な声だ。
言葉さえ発することができないくらい体力を使った女性はもう、走るのは限界であった。
(―――でも、死にたくない!!)
そう思った時だ。ガチャリという重い音が女性の耳に届いたのは。
続けてバァン!!と、とてもうるさい音。
もしかしたら町中に響いているのではないのだろうか。
「……あ、?」
「当たったー!」
女性は右足に力が入らなくなり、そのままバランスを崩して倒れた。 荒い呼吸のまま、何があったんだと頭をフル回転させていると力が入らなくなった右足が妙に熱いことを感じた。
疑問に思い、足をみるとそこには血だらけの足が。 火薬の匂いが漂う中、女性は嘘だ、嘘だ、と信じたくない現実を見る。
激痛が走るのをお構い無しに立ち上がろうとしたが、前方に小さな人影があることに気付き立つのを停止させた。
「僕のために、死んで?お姉さん。ちょっとの間痛いだけだから――。」
小さな人影がてに握る鈍く光る棒が思いっきり降り下ろされた頃には、女性はただの肉の塊へと変わり果てた姿になっていた。
「よいっしょっと…」
「あなた…そんな事をしてどうするの?まだ子供なんだから早く寝なさい。」
「また僕のことを子供って言ったー!僕は以外と大人だよ!?」
「はいはい、そうね。」
「なんかムカつくー」
先ほどまでの緊迫とした雰囲気は消え去ったような会話を行うのは、子供と女性だ。血に沈む死体の左腕を切り離そうとする子供は無邪気で女性と会話をする。 先ほどまで生きていた女性とは別の女性。彼女は子供の切り離す姿を当たり前のように眺めていた。
深夜の街で毎日このような事が起こっていることはニュースととなって知られている。 が、まさか犯人が幼さが残る子供だとは市民も、治安組織でさえ夢にも思っていないだろう。
「やっぱりキレイな腕をしてるなー」
「腕フェチみたいな発言はやめなさい、ソラ。」
「あーい。」
切り離した腕を眺めていたソラは、あっさり、ひょいっと棄てて歩き出した。
「証拠はないわね?」
「大丈夫だよー」
「視線は?」
「感じなかったよー」
「なら良し。明日も学校なんだから早く帰りましょう。」 「はーい、ナイト先生=[。」
ソラと呼ばれた子供はニンマリと笑って女性をナイトと呼び、2人はその場を立ち去った。
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