お見舞い
 




「ソラ、お見舞いに来たけど……。大丈夫?」

「あ、レイカーっ!大丈夫だよ!」

「……お前…、めちゃくちゃ元気じゃねーか。サボるために休んだのかよ?」

「違うよルイト。ナイトが行くなって止めたんだよ!」



ツバサが立ち去って数十分が経つと、ルイト、ジン、レイカ、シング、ミルミがソラのお見舞いにやってきた。

しかし彼らの予想に反してソラはいつも通り元気だった。

ベッドにすわるソラを見ながらシングとミルミは少し耳打ちをした。
そしてソラに話し掛ける。



「ソラ、今日はなぜ休んだのだ?」

「えっ…と、ちょっとさぁ、昨日の夜に風邪をひいて…」

「そうか。」



シングの赤い目がソラのあおい目を突き、ソラは視線を曖昧に動かす。

シングはそれだけ聞くと顎に手を当てて何やら考え始める。
ミルミはソラをただじっと見ているだけであった。



「じゃ、俺帰るわ。」



ジンはソラがいつもの調子であることを確認すると体の向きを買えて、部屋からでていこうとした。



「あっもう帰っちゃうの?」

「ソラ大丈夫そうだしな」



レイカがジンを引き留めるが、ジンはそれだけ言って部屋から出ていった。
レイカは「そうだけど…」と小さな声で言う。



「まぁどうせジンはソラのむかいの部屋だし、いいだろ。あ、つか俺ジンに用事あるから。」



じゃあな、と残してルイトはジンの後を追った。
シングがルイトを目で追って、ソラの左手に視線を動かす。
ソラはその視線に気付きサッとシングの視界に入らないように左手を隠した。



「……よし、決めた。」

「突然どうしたんですか、マスター?」

「今夜ソラの部屋に泊まる。」

「はいぃっ!?」



ソラ自身でも驚くくらいの大声を出した。



「風邪を再びひいてしまうかもしれないだろう?」

「たっ体調管理くらい自分でできるよ!!ガキじゃないんだから!!」

「その体調管理ができないから風邪をひいたんだろ?」

「ゔっ…。おっしゃる通り…だが…」
(やばいやばい、夜は殺しに行くのに…!!バレたら…っ)



シングにおされ気味のソラを差し置いて、ミルミは部屋にあるTVをつけてニュースを見る。レイカはなにか言いたげに、ソラたちとミルミを交互に見た。



「そっ、そもそも他の人の部屋に入っちゃだめなんだよ!?校則校則!!」

「普段から校則を破っているソラが何を言う……」

「とーにーかーくー!ダメったらダメ!!」



ダメダメと連呼しだすソラにシングは逆に泊まる泊まると連呼した。



「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ!!」

「泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる」

「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ!!」

「泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる泊まる」



完全に無視したミルミはニュースから目を離さない。と、ミルミは突然レイカに話し掛けた。



「見てください、レイカ。また学園の外で連続無差別殺人事件が起こっています。」

「ひ!!……あ、本当だ。怖いね…」



ピタッとソラが硬直する。
なぜならその犯人こそがソラであるからだ。

硬直したソラをシングが見逃すはずがない。シングはふっとソラへ笑った。



「俺の勝ちだな」

「ちょっ……!!そういうルール!?」

「ああ。」

「今のはずるいよシング!!」

「負け惜しみか、ソラ。みっともないぞ。」

「負け惜しみじゃなくてーーーー!!」



ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てるソラ。
しかし最終的にはニュースを見終わったミルミがシングの味方につき、あっさりソラが敗北した。