金髪碧眼の青年
 




「……暇だ…」



ベッドに寝転がるソラは十分に回復していた。
誰もが学校へ行っていて何もすることがないと呟く。

もうそろそろ昼飯食べないと…、とソラが起き上がり、売店へ行こうと財布に手を伸ばした時。

ガッとドアを開こうとする音。
しかし鍵が閉まっているため、開くことはない。
ソラが誰だろうと、財布を取るのを止めてドアに近付いた。

しかし外からの「それはだめですって!!」「そうだ、止めろよ。修理代知らないからな…。つかミントに頼めばいいじゃん」と焦るソプラノとアルトの女の子の声。

何事かとソラは動きを止めた。
そしてドアから5メートルあるところから声をかける。



「泥棒?金目のものなんてないよ?」



言い終わるか終わらないくらいに、一瞬だけ金属が破壊される音がソラの部屋を支配した。



「……は?」

「ああーー!!とうとう殺りましたね!?」

「漢字間違ってるから」



ソラの間抜けな声。
そして先ほどの二つの声がした。
そのあとに、ソラにとって聞き覚えのある声続いた。



「ヒョウ、直しといてよ。」



声変わりを済ませた低い声だ。
ソラの脳にはつい最近の記憶が浮かび上がった。



「き、金髪碧眼!!」

「は?何、俺の事?」

「あたしは髪、薄い茶色だし。」

「どうしましょう、私薄い金髪です!!目は緑ですが!!」



ソラのあおい目が丸くなる。
ソラの目がとらえるのは、ジンとサボりに倉庫へ行くときに見たあの金髪碧眼をした人だった。



金髪碧眼を残して二人の少女は立ち去った。
その際、髪が長い茶髪の人が呪文を呟いて壊したであろうソラのドアを直していった。



「ソラ、俺の事覚えてる?」

「倉庫の不審者。」

「殺すよ」

「覚えてません!!」



ソラが座るベッドの横に金髪碧眼が座る。
彼から殺気を感じたソラはピンと背筋を伸ばした。
ついでに正座になった。

金髪碧眼は「やっぱりね」と言ってソラの頭を撫でる。
ソラは、会ったことあるっけ?と記憶を探っていた。


そして浮かび上がるのは、集会の時の光景。

四大組織のボスであるウンディーネ、ノーム、サラマンダー、シルフは、定期的に集まってお互いの現状を報告しあうのだ。
そのことを集会という。
その際に、ボス補佐も集まる。
警備ということでソラも何度かウンディーネとナイトについていった記憶があった。



「……あ!!」



ソラが勢いよく立ち上がる。
金髪碧眼は撫でていた手をそのままの位置に残して、ソラを見上げた。
楽しそうな、表情を浮かべながら。



「も、もしかしてサラマンダー様!?」

「ソラも"様"をつけるのか。」



金髪碧眼、もといサラマンダーは否定をしない。
ソラは肯定と受け取る。

ソラの頭に一気に表示されるのはサラマンダーに関するわずかな情報。


彼はこの学園の校長であり、創立者だ。
さらに今の四大組織があるのも彼のおかげ。

情報組織と言うだけあってなかなか情報がない。
ソラはため息を吐く。
そして最後のいくつかの情報を思い出す。

彼は不死であり、現段階で史上最高年齢。

武術面では、その蓄積があり、世界的に見てもトップクラスである。
彼の手にする情報量もトップクラスであるだろう。
彼の実力ははかり知れない。

どうやら本人はトップクラスだと思われる事を嫌っているようだが。

そして最後に、彼の異名…、通り名を脳裏にみた。

『ふざけた道化師』

ソラにこの意味はわからない。


四大組織のボスは異名をもつ。サラマンダーは『ふざけた道化師』。
ノームは『狂研究者』。
シルフは『棺の管理人』。
ウンディーネは『虚無の肉体』。



「ねえソラ」

「は、はい!!」



さらに背筋を伸ばした。
サラマンダーはため息をついて、「あのさぁ、」と続けた。



「その敬語、止めてよ。なんか嫌だ。」

「でも、サラマンダー様は……」

「ほら、それも。"様"も要らないよ。
俺そこまで偉くないし。
普通に接してくれると嬉しいの。」

「それは失礼なので…」

「さっきの子たちは俺と同じ炎の組織だけど、タメ口だったよ」

「それはそうです、けど……」

「俺の名前はツバサね。改めて宜しく。次敬語でしゃべったり敬称つけたら、ウンディーネに言うからね。」

「……ウ、ウンディーネ、様に?」

「そう。ソラを叱るように。」

「これからよろしくね!!ツバサ!!」

「はい宜しく。」



ソラはツバサの両手を掴んで上下に大きく振った。とてもキラキラした笑みと冷や汗を浮かべながら。