協力要請
 

助手と左都を見送ったあと、ルベルはロズに協力を要請した。彼女は人間ではない。あまり真実を話さないほうがいいというサブラージの助言のもと、ルベルは適当に誤魔化してロズの協力を得た。失ったものは来週の日曜日。
ロズには先に南区で爆弾の分解と回収をしてもらい、ルベルはサブラージと現在いる西区でそれらを行った。



「で、分解の仕方は大体こんな感じ」

「へぇー。なんかうぜぇけど、ありがとな」

「前半のセリフがムカつく」



すっかり調子を戻したサブラージはルベルに爆弾の分解の仕方を教えていた。別れた助手から送られてきたメールに爆弾が仕掛けられている場所が書かれていた。失ったものは何枚かの紙幣。かなり一方的に報酬の金を強奪した上、サブラージには請求していない。その理由を聞いてみれば「年下だから」だそうだ。助手からもらった情報を活用して、西区の爆弾を分解、回収したのは開始から数時間後のこと。今日爆破するわけではないにしろ、安心できずルベルの胸騒ぎは収まらなかった。目の前にいる自分よりも小さなサブラージを無自覚に眺めていると彼女はルベルの視線に気付いてルベルを見上げた。



「どうし、……」



どうしたの?、そう問い掛けたかったサブラージの口は途中で動かなくなった。ちょうどルベルの背後にある車があまり通らない道路に目が向いている。ルベルも何事か、とサブラージと同じ方を振り返った。

そこにあったのは、トラック。荷物を運ぶ大きなトラックだ。その運転席からは迫力のあるトラックに反比例した気の弱い優しそうな笑みを浮かべる青年だった。



「あ、ルベルにサブラージ!そこで何をし、痛いっ!」

「何をしているんですか、ベルデ」

「そうです。指定された時間まであと10分だ。間に合うのか?」



運転手――ベルデの背後から現れた黄果とコリーもそれぞれルベルがいることを確認すると様々な反応を見せた。



「おい、何をしているんだ?早く行かないと……、ルベルじゃないか」



遅れて現れた紫音は煙草を吸いながらトラックの上に現れて、おどろきもしない反応を示した。持っている拳銃をしまわないということはいくら親しいルベルでも今は信じていないのだろう。



「あ、どうせならお前らも協力してくれよ」

「え、ルベル、こいつらも!?」

「手は多い方がいいだろ。ベルデと黄果は爆弾の扱い方を知ってる」

「……ベルデならいいけど……」

「ベルデならって、お前いつからあんなモヤシになついたんだよ」



「モ、モヤシ!?」と衝撃を受ける青年を紫音は慰めた。
ルベルはそれを無視してサブラージと共に事情を話す。二人の協力要請にすぐ頷いたのは、意外とコリーだった。



「面白そうじゃないですか。協力しよう。俺の手さえあればすでに解決したも同然!なぜなら俺は――」

「そうですね。マフィアを直接潰せないと本当に死んだのかわかりませんし」

「え、僕、せっかく車庫からトラックだしたのに……。あ、協力はするよ」



案外、すんなりと協力を承諾してくれた。サブラージは不意を突かれたように一瞬固まってしまった。ルベルはとくに気にすることなく「ありがとな」と笑った。
ただ一人、まだ承諾していない紫音は眼鏡の奥の瞳を細くして口を開く。



「ルベル、その目はどうした?」

「ガンマにやられた怪我だ」

「彼女の正体は知っているのか?」

「サブラージか?知ってる」

「……」

「なんだよ」

「いや。私も協力しよう。大事な仲間が助けを求めているのならな」



紫音はサブラージも視界にしっかりいれると笑って見せた。つられてベルデも頬を緩ませた。



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