そして彼は再び
 


ルベルがサブラージを担ぎながら自分の部屋に帰ったとき、左都はすでに眠っていた。左都の隣には助手がいて、金色の目を丸くさせてルベルたちを見ていた。ルベルの後ろから出たロズもちゃっかりルベルの部屋に上がる。



「ちょ、それ回収屋のサブラージじゃん……!左都起きて!!サブラージにベットを譲るよ」



布団を捲って左都を叩き起こすと、入れ違いにサブラージは左都がさっきまで眠っていたベットに落ち着く。
助手のジャージの袖に隠れていた手を出して目を擦りながら左都は周りを見て、助手に問い掛けた。



「……これ、どういう状況なの?」



ロズはそんな左都を見て、サブラージを寝かせたばかりのルベルの肩を叩く。



「あの子一般人じゃないの!?どういうこと!?助手の彼女!?彼女といちゃいちゃする場合は私に一言言って頂戴!ルベルと手本を見せてあげるわ」

「あいつは昼間合った奴。マセガキのダチっぽかったな。つぅか助手と……う……じゃねえ、左都はだいぶ仲良いみてぇじゃねえかよ。……おい、くっつくなロズ!!」

「あら?照れてるの?いやん、照れ屋さんね」

「どこをどうみたらそうなるんだよ!!」



ロズは悪戯っぽく笑って「ごめんなさいね」とルベルから離れた。人口密度が高いその部屋から出ようとロズは玄関のドアノブに触れる。



「私は用がないしもう行くわ。ルベル、困った時は私が援助してあげるわ!助手も、依頼はいつでも受け付けているわよ。じゃあねー」



ロズは手を振って夜の中へ消えていった。

残ったルベルたちは互いを見合った。まだ眠そうに首を傾ける左都が眠るのも時間の問題だった。助手は立ち上がった。



「僕と左都はあっちの畳の上で寝るね。サブラージは任せたよ」

「あ……、おい!!」

「おやすみー、夜だからそんな大声ださないでね」



左都の背中を叩いて助手は八畳の部屋の襖を閉めた。
ルベルはため息をついて前髪をかきあげた。そして窓の外の都市をその緑にちかい瞳に映し出す。サブラージの寝息だけがルベルの耳に入る。

すっと月光をうつす彼の唇が動く。



「……なんで、だよ……!」



どうして、あのとき、ユアンが

そんなことばかりがルベルの頭を過り始めた。

彼女を忘れていたわけではない。

だが、彼女が突然脳裏に過ったことには理由が存在するはずだ。

なれないことながらも、ルベルは一晩中頭を悩ませた。

彼女を思い出す度胸が絞めつれられ、彼は机に顔を俯せた。
































パン、と拳銃が鳴り響く音がした。



「ベルデ!」



紫音が数十メートル後ろにいるベルデへ叫ぶとその場に屈んだ。

紫音の銃弾で宙へとんだ対象物は後方からのベルデの銃弾が見事に食い込み、破壊された。
いくつにも分解されたばかりのその対象物を近くにいたコリーが踏み潰す。



「ルベルにはこの事実を知らせるのか?……まあ、正体を少しでも疑わないあいつもあいつだがな」



紫音は拳銃をしまいながら、路地裏の壁に背を預けて一連を見ていた黄果に問い掛けた。
黄果は頭に装着している眼鏡をしっかり目にかけて、駆け寄るベルデが自分の声が届く範囲に入ったことを確認すると、自分の金髪を弄りながらその答えを出す。



「遅かれ早かれ、彼は気付くでしょう。こうして雑魚に回収させた端末機器も壊しましたが……」

「事実を知ってもルベルは変わらないでいられるかな……」

「それはわかりませんよベルデ。だが、今までと完全に同じではいられないだろう。俺たちもそうだ。それに、情報屋から買った情報では、アイツが事実を知って、近いうちに行動するらしい」

「あいつって……。……まさか!」

「そうだ。コリーの言う通り……、神父を、ユアンを殺した張本人の――ガンマだ」




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