第三勢力は邪魔
 


「それを俺に渡せサブラージ!!」

「やーだね。これは私の仕事なんだから。仕事とらないでよ。」

「お前こそ俺の仕事を奪ってんじゃねーよ!!」



街を囲う防御壁の近くを走る二人。

今回、ルベルは右手に大鎌という得物をもっている。対するサブラージは携帯端末機器を握っていた。

その携帯端末機器こそ、ルベルが求めているもの。



(や、ばい……っ!体力がもう……)



ルベルがサブラージを追いかけてすでに一時間が過ぎようとしていた。
走っているスピードがだんだん遅くなるサブラージにルベルは口角をつり上げた。

いくら互角の力といっても、それは互いの頭のキレと体力などを総合したものにすぎない。

体力面では成人男性であるルベルが圧倒的に上――。今回走っているのは昨夜のような、サブラージの戦いやすい場所ではない。

と、サブラージが内心焦っているとルベルが跳躍していっきに距離を詰めた。



「今日は俺の勝ちだな」

「物をとってから言いなさいっ」



大鎌を水平に振るがサブラージは屈んでそれを回避し、袖から瞬時に短剣を手に滑り落とした。

右手が大きく開き、ルベルの体を守るものは衣服と左手のみ。ほぼ0距離の間合いでは防御をすることは不可能であろう。
サブラージは上へ短剣を突き上げた。



「……ッ」

「っはぁ、はぁ……」



ルベルは短剣を紙一重で避けると防御に使おうとした左手でサブラージの手首を掴んだ。



「ん。渡せよ。」

「私は簡単に渡すほど優しくない、の!!」



一瞬サブラージはルベルに掴まれたところからぶら下がるように足を中に浮かせ、ルベルの腹を両足で思いっきり蹴る。
衝撃で手を離し、よろめくもすぐに体制を立て直したルベルは大鎌を放り投げて、腰に吊ってあった銃を右手に構える。



「思うんだけど、オニーサンっていくつ武器を持ち歩いてるわけ?」

「……。知らね。」



考えるように少し沈黙したが、結論はそれだった。

ルベルはサブラージと戦闘を行うとき、たくさんの武器を駆使する。例えば今のように拳銃、大鎌から、手裏剣、刀、ワイヤー、鉄パイプ、剣、弓、チェーンソー……。
固定はない。

一方でサブラージは昨夜使用した手榴弾と今握っている短剣。そして格闘技だ。
手の内がわからないというのはルベルの最大の長所である。



「あ?」

「っ!?」



これから第二次戦へ突入する、というところで二人は自分達以外の気配を察知した。
それも複数。
ルベルが周りに目をくばる。ルベルとサブラージを囲うのは防御壁と木、そして古びた小屋。



(1、2、3……、おいおい、夢落ちを願いたいくらいの数だな、こりゃ。まだ刑務所に入りたくねーよ)



警察の気配かと疑ったルベルはすぐにその考えを否定した。いや、せざるおえない。

ルベルとサブラージを中心に何人もの男が現れた。全員不良らしい。近隣の高校の制服をだらしなく着崩し、雰囲気も悪い。

それに混じる私服姿の男性がちらほら。
ただの不良集団にしては少し年齢がバラバラだ。高校生から中年の男性が二人を睨む。



「なんだ?テメェら……」



銃をおろして適当にルベルが問うと一人の男性がハッと笑った。



「そこの嬢ちゃんが持ってる携帯端末が欲しいンだよ。俺たち。」

「……っ」

「なんで欲しがるんだよ?」

「上からの命令だ。知るかよォ」




男性はゲラゲラと笑った。

ルベルにはこんなガラの悪い相手を敵に回すようなことをした記憶がない。
だが職業が職業なだけに、暴力団を敵にしたり味方にしたり、第三勢力に含めたり、依頼主にすることは珍しくない。



「……よくわかんねぇけど、敵だな。見た感じじゃあ、マフィアの下端ってところか」

「第三勢力みたいだね」






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