教会の神父
「えぇ…マジでやんのか?」
「お兄ちゃん、腹をくくれ」
「なんだノリ気じゃないのか?ルベル。珍しい」
「そうですね。って、いつまでいるんですかベルデ。さっさと行きなさい」
「な、なんか仲間外れされたみたいだ…、うぅ…」
「頑張ってくださいねベルデ。まあ俺の美貌さえあれば一瞬で奴らは倒れるがな。」
ルベル、ユアン、紫音、黄果、ベルデ、コリーの6人がピッタリ壁から顔だけを突きだし、縦一列に並んでいた。端から見れば変な子供が変な遊びをしている、程度の認識だろう。本人たちはいたって真面目にターゲットを観察しているのだが。
6人がいるここは北区の街。さすがに中央区ほど栄えていないものの、こちらもそれなりの騒がしさを持っていた。 その北区の街にある教会。それは小さな教会であるが、歴史を感じる古い構造と年老いた柱が漂わせる雰囲気があり、北区で有名な教会だった。 白を強調した教会の壁はお世辞にも綺麗なものとはいえない。黒を纏うシスターや神父が辺りをうろうろ散歩している。ほんの一人か二人だ。
ルベルたちが生活の糧として今回選んだのがこの教会。だが、元信者であるルベルは後ろ髪ひかれる思いでいつもより消極的だった。それが気になるのか、紫音はたびたびルベルを気にする。
「おや?どうしましたか?」
背後から物腰が柔らかい男の声がして、6人の肩があがった。 振りかえると、十字を首から下げる神父の姿があった。にっこりと笑った顔にシワが何本かできていて、とても優しそうだ。
「あ、えと…っ」
ベルデがおろおろとしはじめる。ケースにいれているからいいものの、背中に背負っているものは本物のライフルだ。
神父がルベルたちを見て、決意したように頷く。
「もうお昼時ですね。私の家に来ませんか?食事を出しましょう」
これにはルベル、ユアン、コリー、ベルデが目を輝かせた。黄果は仕方ないとばかりに頷き、紫音も含めてみんなで神父の家へ行くことになった。
ぞろぞろと6人の子供をひきつれて神父がついたのは小さな家。庭に植えられた植物が太陽の光を受けて輝くのをベルデが興味深そうにみていた。
「私が作っている間にお風呂に入りませんか?」
やはり優しい笑みをする。黄果はそんな神父を、最後尾から睨んだ。
「なんか本来の目的からずれてねぇか?」
「ご飯が食べれるならなんでもいいですよ。それにしてもこの神父さん、優しいんだな」
ルベルとコリーがこそこそ話をしている間にユアンが無邪気にはしゃぎながら紫音と黄果を連れて風呂場に駆け出して行った。
ベルデはライフルが入ったケースを抱えて、キッチンへ入っていった神父を見送った。神父に言われ、三人はリビングのソファではしゃいだりおとなしくテレビを眺めていた。
暫くすれば女の子と男の子が交替する。黄果はキッチンへ入って「手伝いをします」といって料理に参加した。 ユアンと紫音はドライヤーで髪を乾かしている。
「聞きたいことがあります。」
野菜をトントンと包丁で叩きながら黄果は神父へ話しかける。神父は話しかけられると思っていなかったのか、ぎこちない反応をした。
「どうして私たちをここへ誘ったのですか?正直なことを言ってください。」
「……。」
神父はいちど黄果を見た。黄果は神父を睨んでいて、殺気までもがにじみ出ていた。
「私はあなたたちが犯罪者だということを知っています。殺人はおろか、盗みまで行っている。私はそれをやめてほしい。そんな大人にならないでほしいのです。まだ子供です。きっと正しい道へ導ける。」
神父は切ない表情で左手で十字を握った。
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