プロローグ
裏世界にも職業がある。
例を挙げるならば、マフィア、情報屋、始末屋、運び屋、伝言屋、代理屋など。 彼らは裏世界で真面目に生きている、と俺は思う。実際、俺もその一員だ。現在進行形で必死に働いている。
ここ、夜の細い路地裏を走り抜けながら。
「待てよテメェ!!絶対殺す!!」
「あはははっ!!頑張ってーっ」
俺は追いかける。俺の前を走る女を。まだガキだ。マセガキだ。 奴は回収屋。毎回俺の仕事にこいつが関わっている。
知り合いの運び屋はヘタレだ。だからすぐに回収屋に邪魔されて、仕事ができないと言う。そして俺に奪還してほしいと依頼をだす。 バカか。自分の仕事なら自分で何とかしろ。 と、いっても俺はその依頼があってこそ食っていけるわけだから本人には言わない。まあ、いっても聞かないだろうが。
「クソガキ!!」
「レディに向かってそれはないんじゃないの?紳士になりなよオニーサン」
「てめぇのどこがレディなんだよ!!」
走っていたマセガキはくるりと体の向きを変えて俺の方を向いて立ち止まった。俺はチャンスだと思い、直行。
「毎回思うけどオニーサンって単細胞だよね。少しは頭を使ったら?」
「あ゙ぁ!?」
「ほら、すぐ怒る」
にっこりマセガキは笑った。
手には俺が目的とするアタッシュケース。もう片方の手には、濁った色をしている……手榴弾。
はぁ!?手榴弾!?
「私がわざわざこんな細い路地裏に逃げ込んだ理由がわかった?ばいばいオニーサン。生きてたらまたねっ」
「ッ!!」
マセガキは何の躊躇いもなく手榴弾のピンを抜いて俺に真っ直ぐ投げた。
そして爆発。
急いで後退した俺には被害がない。あえていうならば、飛んできた小石で頭を打ったくらいだ。
……思ったより痛ぇぞコレ……。
晴れた煙の先にはやはりマセガキは居ない。
「ッどこいったサブラージ!!」
マセガキの名を思いだしながら苛々する。
明日も夜の街を走り抜けるだろう。いや、絶対そうだ。今夜は敗けたが絶対明日は俺が勝つ。
それが奪還屋である俺の日常。
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