人造人間
 



助手は右都から借りたディスクをパソコンから取り出してしまった。



「白華を北区や南区マフィアが狙うのは、さっきもかじったけど彼が人造人間だから。人造人間の存在は一般人には知られてはいけない秘密事項なんだって。白華はなんらかの理由で人造人間の存在を知ったんだろうな……。そしてマフィアにバレた」

「……だいたい当たってる」



白華は欠損した部分をさすった。
助手は白華を見る。右都はそっと目を閉じた。そして聞き入るようになる。



「オレ、運が悪くて学校の帰りに寄り道して迷子になってさ、たまたま入り込んだ施設がヤバイとこだったみたいで……。そのときに知っちゃったんだよな。人造人間だってさ。自分が人造人間だってことも知らなかったし」

「……なんなんでしょうね、この世界は。矛盾や謎が多いですよ。この都市の生活には、謎が多い」

「右都」

「あ。……ごめん」



三人が押し黙った。音がでない病室に詰め込まれた三人は誰からも話し出すことはなかった。
廊下を走る音がする。助手がパソコンを閉じてわきに置く。白華はドアのほうに体を向けた。がらりと病室のドアが開き、黄果が現れた。



「北区マフィアの飯田がこっちに向かってるそうです。足止めはしますが、病人は残して君たちは逃げなさい。左都にはコリーを側につけますから」

「白華を狙ってるのか……。白華、逃げるよ。左都のことは任せた、黄果」

「安心してください。うちの病人はなんとしてでも守りますよ」



助手は刀をもって窓を大きく開けた。一階のその病室から外へ飛び降り、そのあとに白華が続いた。
助手は一度、病室を振り返った。右都が怪我をしていないほうの腕で手を振るのが見える。



「白華、とりあえずこの南区から出て中央区の繁華街にでよう。そこでは手を出せないはずだから」

「わかった!」



南区にある地下鉄をひとまず目指した。人目の多いところて白華を殺すことなどできないだろう。なるべく公共の乗り物を使っていこうとする。

しかし、その行く手を、女帝が阻んだのだった。

拳銃を片手に、白華に狙いを定めている。
助手は舌打ちをした。まんまと策にはまったのだと気が付くころには、すでに二人の周りを北区マフィアに囲まれていた。