今後の予定
 


「彼氷――女帝とは幼馴染みだから考えていることはだいたいわかります。攻撃的でありながら状況を冷静に判断することができる北区の次期当主は厄介でしょう。わたしは攻撃をやめるよう説得しますが、北区のガンマに全面の指揮を任せることもあります。なにより飯田が勝手に騒ぎ出すこともあります」

「ちょっと待ってください。いえ、今のことは本当に助かります。しかし……いえ、そもそも」



寝ている左都のそばで助手は片手の手のひらを前方に見せてジェスチャーをすると、話題の要である白華のことを考えた。

白華が隻腕であるのはなぜだ? なぜ白華が狙われている?

そもそも……、そもそも、そのことを知らない。



「察しているでしょう。彼が隻腕であることは狙われる理由に近いです。あなたの両親を殺したのは、その秘密を知った恐れがあったから」

「……。なるほど」



重たいため息を静かに吐くと、助手は考えた。心当たりがあったのだ。表情には出さず、わからないなと首をかしげてみせた。



(もしかして、あのことが関係しているのだろうか。それで僕の両親が死んだのだとしたら……。いや、それよりもこの事実はやはり知ってはいけないことだったのか)



助手はそのことについて口を固く閉ざし、皇帝との話を続行させた。
最終的に、南区マフィアはおおっぴらに助手たちを手伝うことも守ることもできないため、自力で来る攻撃には耐えてくれとのことだった。北区の女帝と話はつけるからそれまで、と。それと、白華の知った事実が漏れることは避けたいと。助手に知ろうとしないで、と。



(……もうかじってしまったけどね……)

「ではわたしたちはこのへんで帰りますね。ああ、そういえばあなたのことはなんとお呼びすればいいですか?」

「僕は情報屋の助手です。ついさっきなったばかりですけどね。そのときに名前は捨てました。助手、と」



助手は営業的な笑顔をした。ノウが少し驚いた表情をしていたかま、皇帝はそれで驚いた表情を素直に浮かべなかった。



「情報屋とは……、あの、数ヵ月前にできた新しい情報屋ですよね……?」

「はい。ご利用お待ちしております」



にっこり、と。助手が笑顔をみせると皇帝はぎこちなく笑い返した。ノウは皇帝と違う意味で驚く。一般人だったのに……、とでもいいたげだ。
彼らが立ち去ると、助手はすぐに病室にあったノートパソコンの電源を入れた。ソフトを読み込ませ、ノートパソコンの穴にいくつか四角い物体とメモリーカードを挿し込んでノートパソコンのなかをいじりはじめた。自分のもつ、白華と共通で知った事実を調べはじめた。