SSS

  

ルイトはラッキースケベである。
と、謎の女子会となる会議で結論がでた。


「……あのさあ、オレを女子に加えないでくれる?」

「でもソラ、生えてないじゃない」

「いや生えてないけど男装してるときに女扱いは迷惑というか困る。空気読めっていう」

「ナニ?」

「ちょっと誰か。このうるさいシャトナの口を塞いで」

「素っ気ないソラも大好きよ!」

「うわまた始まった。あっち行け露出狂。シッシッ」

「やぁんっ。燃える!」


たまたま隣に座っていたシャトナはオレの腕に巻き付き、オレは振り払う。今回、暗殺部の会議室を貸し切りして行われるのは会議。対策案を出す会議。何の対策かというと、それはルイトについてであった。ルイトは本人も悪意のない

オレのやさぐれた態度に口を尖らせたのはミルミだった。


「悔しくないのですか、ソラ。ちょうど風呂上がりの無防備な時間にルイトと遭遇したり、転んだらルイトの手が胸の真上にあったり、か、顔が……」

「別に気にしてないけど。オレ。まあオレの場合、全裸になってもルイトの目のいく場所っていったら刻印だと思うけどね。進行具合とかちょくちょく聞いてくるし」

「ソラ、ルイトも年頃なのですよ。 油断してたら襲われますよ。とくにソラは部屋が隣なのですから」

「オレがルイトにやらるわけないでしょうが」


帰っていいかな。めんどくさくなってきたわ……。


「ソラ、男前だね……」


モジモジと居心地悪そうにするレイカが呟いた。彼女も被害者らしい。ここにはミルミ、レイカ、シャトナ、シドレがいるのだが、みんな被害者なのだろうか。ていうかシドレ? 男性恐怖症なんだから異性とは基本的に距離をとっているのかと思ったら案外そうでもないのか?


「シドレはどんな被害にあったわけ?」

「私ですか? あ、あんまり近づかないでくださいね……」


シドレはオレに念をおしてから最近あった被害を簡潔に話してくれた。


「私の場合は目撃が多いですよ。この前、ワールの部屋で着替えてたら彼が入ってきたんです。ちょうどワールに貸していたCDを受け取りに訪れただけみたいなんですが。驚きましたよ」


男子寮の一端はオレとジンの部屋になる。そしてオレの唯一の隣室がルイトであり、ルイトはワールとも隣室だ。つまりルイトの部屋はオレとワールによって挟まれている。隣室であるから関わることも多々あることだろう。遠慮少なくなるだろう。目撃はそういった理由でなってしまうのだろうな。シドレはくびれから腰にかけてのラインが良さそうだし。無駄にナイスボディのシャトナより色っぽく見える。


「私、露出狂とは違って目撃だけで死ぬかと思いました」

「あっらー? なんでシドレがワールのところで着替えているの? シドレこそ露出狂じゃない」

「一緒にしないでいただけますか? けがらわしい」

「そのけがらわしいことをしてるんじゃない」

「私はシャトナとは違います。私の部屋のお風呂が調子悪いのでよくアイやワールの部屋にお邪魔するだけです。隣の部屋の異能者が水流操作能力者なので仕方がないのですが。ちなみに。アイとワールは私の愛すべき家族です。あなたの邪念を押し付けないでください」


シャトナとシドレの仲は実は悪い。とことん肌が合わないのだ。二人とも嫌なことは嫌という性格であるせいか、こうして口論することが度々ある。
レイカが救いを求めるようにオロオロとオレやミルミを見るが知らんぷりをする。こんな二人は放っておく。それにシャトナの気がシドレに移っている今はこうしてベタベタくっつかれないので楽だ。


「とっ、とにかく、私たちはルイトの謎のスキルについて対抗策を」

「対抗も何も、ほとんどそれって偶然じゃん。予期せぬ偶然に対策なんてできるわけないっしょ」

「それはそうかもしれませんが、私たちが常日頃からできることはないかと皆さんに集まってもらったのです。今はルイトの謎のスキルの対抗について何もできなくても、自主的にできることがあるのかもしれませんよ」

「じゃあルイトに近づかなければ?」

「いえ。私もレイカもルイトの友達です。不可能です」


ミルミはため息混じりに言う。シャトナはともかく、シドレは仕事仲間であるし、ミルミとレイカは友達。切っても切り離せない関係である。


「えー、諦めれば?」

「で、ででできるわけないでしょっ」


顔を真っ赤にしながらレイカは反論した。
まあオレは気にしてないし正直どうでもいいんだけどさ……。


「あらぁ、可愛いわね。レイカ」


シャトナが色っぽく艶やかな声を発した。発しながらオレにすり寄ってくる。きもい。
シドレは冷ややかな視線をシャトナに向けた。


「やはり各自の防衛を高めるしかないのでしょうか……」

「ルイトも悪気はないのですから、やはりそうなのでしょう。注意深く行動せねば」

「でーすよねー」


シドレとミルミが答えを出した。当然ともいえる結論に至ったのだが、レイカの不安は拭えないようで眉を下げたままだ。しかし現状、ルイトの謎スキルにはどうしようもできない。オレはぜんぜん気にしてないからかまわないんだけどさ……。ていうかオレからしてみれば皆が気にしすぎ。なんでそこまで気にすることやら。


「私、ソラが相手なら構わないのに」

「シャトナまじで気持ち悪いから」

「あら〜? 連れないわね。ソ・ラっ」


うわナニコレ。今寒気がしたんですけど。


「レイカ、不安ですか?」

「……ミルミ。うん、正直……不安。だ、だって、つまずいて転んだら、ルイトの、顔が胸……に。とか、悪気がなくて偶然が多い……から」

「そうですね……」

「大丈夫です!」


ミルミとレイカの会話にシドレが加わった。シドレはミルミとレイカの頭を優しく撫でながら安心させる。


「気を付けることで変わることはあるはずです。例えばつまずかないように足下に気を配るのも然り。ルイトの行動範囲では少しでも警戒してみるなどをしてみてください。変化はあるはずですよ」

「そ、そうかな……」

「ええ!」


レイカの表情は和らいだ。どうやら一件落着らしい。
さて、オレはさっさと退席して戦闘訓練をしにいこう。手始めにシャトナを引き剥がし、オレは廊下に出るドアへ手を伸ばした。ちょうど背後ではシャトナがオレに抱き付かんと飛び込んでいる真っ最中のことであった。ドアノブに触れるよりはやくドアが開き、オレは背後の異様な気配を感じて横へ回避した。開いたドアの先にはルイトがいて、空中へ身を投げていたシャトナは予想外の展開に目を丸くした。一瞬の出来事だ。瞬く間にルイトはシャトナの下敷きとなり、ちょうどその顔にシャトナの豊満な胸がのし掛かっていた。いい具合にシャトナの脚の間にルイトの片足が割って入っていたりと、謎スキルはいつのまにやら発動していた。

ミルミはやはり無表情のまま口をポカンと開け、レイカは耳まで赤面し、シドレは嘲笑の笑みをシャトナに向けていた。
オレはそさくさとこの部屋から出ていく。背後でシャトナがルイトに怒鳴る声が聞こえた。

   

2014/03/27 23:59



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