▼ SSS 今年で34歳になる、どこの裏組織にもいそうなモブキャラである僕は今の今までそれなりに平凡な日常を謳歌していた。つい数年前に同じ職場の女性と結婚して幸せの真っ最中といったところなのだ。まあ、この組織に身を置いているため、完璧に平穏な日常が謳歌できるのかは怪しいところだ。 僕はこの組織の傭兵部に所属している。人が一番死ぬ傭兵部だ。世界の各地にまだ起こっている戦争の傭兵に駆り出されるのは当然のことだが、最近では何でも屋のようにいろんな仕事をすることがある。まだ入社して1年の僕は驚くことばかりがこの組織にある。僕のそれ以前の職場は、警察官だった。治安組織ともよばれる。治安組織には封術師の多くが在籍していて、かくいう僕も封術師だ。悪の組織とやらに魅了されて治安組織を脱退した。 そんな僕は、いま、人生最大に動揺している。動揺しすぎで呼吸を忘れて今噎せているところだ。 そりゃ、尊敬しまくって仕方がない我がボス、カノン様が廊下で穏やかな寝息をたてていたら当然のことだ。 彼の補佐はどこにいるんだ! エテールは!? いや、このままカノン様を放置するわけにもいかないじゃないか。ああ、もう、どうしたらいいんだ!! カノン様起きてえええええええ! 「やっほー、モブくん! なにして……ぎゃあああああああああカノンさ、むぐぅっ!?」 廊下の角から現れた子供体型のシャラが叫んだので急いで口を手で抑えた。 空 気 を 読 め ! シャラはシルクハットが落ちてしまうほどブンブンと頭を縦に振って了解の意をしめし、僕から解放をもとめるので解放してやった。 すると彼女は口を尖らせながら文句を言う。 「先輩に向かってそんな態度よろしくないんじゃないのー」 「人生の先輩がありがたく口を塞いだんだから感謝しろ」 「っていうのは口実で、実はロリコン!?」 「僕は紛れようもない愛妻家なんだ」 愛しげに左手の指輪を撫でれば、シャラはぷっくりと頬を膨らませて拗ねた。 子供なのは見た目だけじゃないらしい。 「シャラのことはどうでもいい。カノン様を……起こすべきなのか?」 「ふふん。組織の先輩としていいことを教えてあげよう後輩くん」 「なんですか」 「愛想のない後輩なんて可愛くないぞー。まあ今は許そう。カノン様が歩行途中に眠くなって寝るのはよくあることなの。エテールならきっとすぐに迎えに来てくれるよ。よって、発見者の私たちの正しい判断は、ここでエテールを待つことなのです!」 「案外普通の判断でつまらなかったので9点」 「10点満点ー?!」 「なんでだよ100点満点だ」 シャラが文句を言う。両手に装着されたパペットも一斉に文句を言い出した。 僕は総無視をしてカノン様の足があるほうに座ってエテールを待つことにした。暇潰しにシャラと喋る。 これだけ騒いでもカノン様は起きないのだから本当にすごい。ある意味。 2013/06/06 07:48 |
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