SSS




「大切なものって、失ってから気付くよね」

「雑音がうるさいな。そろそろ殺すか」

「この程度で殺意? なんて短気なんだろうね、このチビ」

「貴様が喋らなくてもすでに存在しているだけで殺意が沸き上がるがな」



銃弾がとび、下級、最下級魔術が発動される。ツバサとリャクが同じ空間にいればよくあることだ。リャクは建物に害がないよう、下級、最下級魔術を唱えているが、それだけで壁に穴があいて隣の部屋が丸見えの状態に。ツバサも、容赦なく護身用として持っている拳銃を発砲する。

部屋を荒らしていく二人に気を止めることなく、カノンは着々と仕事を終わらせていった。一段落して、居眠りでもしようかと思い、部屋を見渡すと、防御壁を張っていた自分の周り以外はボロボロに砕けていた。まるで廃墟のように脆く、汚い。
カノンは懐から一枚の真っ黒なカードを取り出すと、喧嘩を続ける二人の間に投げる。カードから召喚されたのは、これもまた真っ黒な蜥蜴。しかもうじゃうじゃと湧き水のごとく召喚されている。



「うるさい」



カノンはそう言い放つ。リャクが魔術で蜥蜴を塵も残らず退治し、ギロリとカノンを睨んだ。容姿だけなら少年であるのに、その目は恐ろしいものだった。だが、カノンは怖じけることなく暢気に欠伸をしていた。
ツバサは拳銃をおろして、ため息をついてしまった。



「ボス補佐がいないと困るな、ほんと。てかなんでここにウノがいないの。まさかウノはちゃんと仕事をしていたのか……」

「そうだろうな。あの人形は真面目だ」

「てか、カノンは一日中寝てるから仕事してないんだよね」

「なんだ。問題でもあるのか。 貴様のように逃げ回るなんて無様なことはしない。そこの天属性は研究室にこもっていたらしいな」

「ふん。問題があるからこうしてオレたちはそれぞれの補佐にストライキされているんだろ」

「頭が良いな、天属性」

「貴様、馬鹿にしてるだろ!!」

「リャクうるさい。仕事しなよ」

「なんだと!? 貴様に言われたくないわ!!」


2012/10/04 08:27



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