コラボ学パロ





「今日こそ逃がさねえ」

「一年生にして射撃部のエースだからって調子こいてんじゃねえそオイ」



ソラは壁の隅に追い詰められていた。ソラちょうど一メートルほどに複数の荒れた不良の先輩が囲んでいて逃げ場がなかった。撃退しようにもスペースが狭すぎる。否、狭くてもソラには道を開けさせることは容易であった。幼い頃から格闘技という格闘技を、武術という武術を叩き込まれていたソラは素人を相手にすることは赤子の手を捻るように簡単なことだったのだ。
しかしソラは喧嘩を売りはするものの、売りっぱなしで実際に手を出したのはほとんどないのだ。自分に武術教えてくれた師匠が競技や緊急事態でない限り武術を使ってはいけないとソラに教えていたのだ。だからソラは暇潰しで喧嘩は売るが手を出したことはほとんどない。
いつも逃げているのだが、今回ばかりはため息をついた。
視界の隅にはボクシング部と柔道部の部員の姿も確認できる。



「おいソラ。なにやってんだよ。早く帰……」

「あ、ルイト」



ソラがどう切り抜けようか考え始めたちょうどその時、でルイトが現れた。放課後ということもあってか、玄関に起きっぱなしだったソラの薄っぺらい鞄を持っている。



「またソラが原因かよ。自分の責任くらいとれよな」

「ちょっと待って。なんでいきなりオレのせいだって決めつけるわけ?」

「じゃあ今回は違うっていうのかよ」

「まあ、原因はオレだ。認める」

「素直に体罰でもくらってけ……、は!?」



以上の会話でソラの身内だと判断されたルイトは不良の一人に殴りかかられた。つい条件反射で避けることに成功したものの、2つの鞄が邪魔をする。



「ちょ、なんとかしろよソラ! うわ、!?」

「ごめん、オレも囲まれてて無理」



状況とは反対に、冷静なソラは焦りをひとつも感じさせない声で言う。頼りがいのある、まるで策でもありそうな調子。だが、ソラとは付き合いが長いルイトは焦る。ソラには頼りがいのあるどころか、状況を客観視しすぎている。策なんて毛頭も考えていない。
ソラが挑発したおかげで、頭の血管が千切れそうなくらい怒る男子生徒たちに、いくらルイトが説得しようが無意味に思えた。ふだんは説得して相手の怒りを鎮めようとするルイトも、今回ばかりは力ずくで脱け出すしかないかもしれない、と冷や汗を流した。



「マスター、彼らを助け出した方がいいでしょうか?」

「いや、ソラとルイトなら大丈夫だろ。……でもボクシング部と柔道部がいるな。しかもあの顔、見たことあるぞ」

「ええ、激励会のときに見ました。県大会を優勝したのですよね、ボクシング部の方」

「苦戦するだろうな。だが俺達は無関係だ。ギャラリーになろう」

「賛成です」

「友達を見殺しにしようとすんなよ!!」



突然聞こえてきた話し声は聞き覚えがある。ソラが目を向けると何メートルか先にシングとミルミがひそひそ話をするように手を口元に添えて話をしていた。ルイトのような良聴能力でもないソラにも聞こえるほどの話し声。
シングとミルミは不良生徒に睨まれると「怖い怖い」と手を取り合った。



「ぐァ!?」



不良生徒が鈍い声をだして倒れた。すぐ側にはさきほどとは違う体勢のソラがいる。ソラがやったのか?、と場の空気は速かった彼の動きに唾を飲んだ。
みえるはずのなかった動きだ。先ほどまで余裕で焦った表情もなくただ傍観していたのに。



「理由はオレの大切な友達と鬼嫁に手を出そうとしたから。つまり正統防衛。ってことでオレは先生に怒られないで済むかな。それにしても先輩。よそ見してたら死ぬよ?」



それからルイトとシングとミルミが介入する間もなくソラが無双した。不良生徒の動きが妙に悪く、ソラは一人で倒すことができた。異能も使わず。










・・・・・・・・・・・・・・・・










「正義の味方って影から誰かを支える方が萌えると思います。見えないところでこっそりと!」

「んだよ、今度は正義の味方が流行ってるのか?」

「いえいえ。ふと思っただけです」



読書をするアイを隣にシドレとワールは屋上からソラたちと不良生徒を見下ろした。


2012/09/07 08:14



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