▼ 朝灰 「きっとみんな不思議に思ってると思うよ。ね、純!」 「えっ、と……。は、はい。……たぶん」 「ほらあ!純もそう言ってる!」 「お前が言わせたもんだろうが。漆」 「そんなわけないよ!ねえ、境!」 「あ?聞いてなかった」 床に寝転がっていた境に話し掛ける漆は彼女の態度に少し腹が立ち、手を置いていた肩に力を入れた。漆は笑顔。 「っいた!ああ、わかったわかった!漆の言う通りだ!手を離してくれよ!」 「ほらねー!」 「……」 「だからさ……」 漆が純と一緒に見ていた紙を響に見せつけた。そこ大きく書かれているのは「朝灰 .」の文字。 「これの読み方!なんなの!?」 「ああ、その話をしてたのか。あ、純のスカートの中見えた」 「ひゃあぁぁあっ!?漆ーっ!」 床に寝転がっているせいで境からの視点で純のスカートの中が見えた。純は顔を真っ赤にしてすぐ隣にいる漆の背中に抱きついた。漆は紙から手を放して純に抱きつく。抱き合った格好になりながら漆は純を慰めた。境からみて漆は背中を向けているのだが、その小さな彼の背中から明らかに境へ冷たい殺気が向けられる。 「な、なあ、響。あいつら仲良しだな」 「くっそ……。漆め。いつもいいポジションにいやがって」 「……だめだこりゃ。んで、この『朝灰 .』の読み方がどうしたんだよ」 「どうしたもこうしたも、境はそれをなんて読んでるの?」 落ち着いた純と身を離しながら漆は首を傾げた。 境は銀のメッシュを触りながら考える。境の頭に自分の頭をのせながら響も考えた。 「「あさはい」」 同時に2人が呟いた。 読み方はそのまま。 「これ、本当に『あさはい』?『ちょうばい』とも読むよ?」 「知るか。人に寄るだろ」 「逆に聞くが、公式な読み方があるのか?」 「よくぞ聞いてくれました!僕と純が調べたんだよ!」 「調べたのか。そりゃ、おつかれ」 「と、ともぐい……」 「「は?」」 「だーかーらー」 「ともぐい、です……。あの、よ、読み方が」 もともと八の字である眉をさらに八の字にしながら純は声をさらに小さくした。漆は帽子を被り直している。 ぽかんと口をあける境に、紙の文字を凝視する響。 やがて響が口を開いた。 「これ、そう読むのか?頑張っても無理だろ……。当て字にしても」 「機械に予測変換ってあるじゃないですか……?あれで出てきたらしいんです、「朝」と「灰」が……っ」 「でもさ、でもさ、こんな面倒なタイトルをつけやがった本人は『読み方なんてなんでもいいんだけどねー。公式は『ともぐい』だけど私自身『あさはい』って言ってるし』って」 本人の真似をしながら漆が言うと境が「はあ?」と、つい言った。 頭をのせていた響は離すと2人に聞く。 「結局、読み方はなんなんだ?」 「そうだ」 「さあ?」 「ったぶん、なんでもいいんじゃないのでしょうか?」 2012/05/28 00:19 |
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