▼ SSS 「うわぁぁっ瑞希ぃっ」 「逃げてんじゃねえ!!てめえ実戦でも敵に背を向けんのか、あぁ!?」 地下に展開する『黄金の血』アジト。その廊下を走り抜ける明とゆうき。明をゆうきが追い掛ける形だ。事実、追い掛けている。 事の発端はついさきほど。明が「強くなりたい」と呟いていたのをゆうきとクレーがたまたま聞いてしまったのだ。ゆうきが明の特訓をする、と言って槍を取りに行って戻ってきたときには明はいなかった。明は幼馴染みの性格くらい、理解している。足し算の計算があやしいくらいバカでも。 ゆうきは兄のゆうりと違って燃えたら燃やし尽くすまで燃えるタイプだ。明がちゃんと力をつけるまで実力行使でやりつづけるつもりだろう。 だから明は逃げた。そして見つかった今でも。 明は瑞希の名前を叫びながら走る走る。 廊下をバタバタとうるさく走るものだから美紀や雪奈、ゆうりに「うるさい」とそれぞれの口調で怒鳴られたりしていた。 「瑞希ぃぃっ」 「明ちゃん!?ゆうきちゃんまで……っ」 明が瑞希を発見して抱き着く。ゆうきは明が止まったので止まり、ぐっと睨む。 「瑞希たすけて!ゆうきがいじめてくる!殺意がびんびんしてるよ!私をあっつい鍋に入れる気だ!」 「てめえ、嘘八百だ!!」 「取り合えず、落ち着こ?」 「……あ、いた」 明が抱き着く瑞希の後ろからクレーが現れる。ゆうきが「なんで居るんだよ」と目で怒鳴るがクレーは涼しい顔でゆうきを、その後ろの廊下の奥をみた。そこには私服姿のゆうりと光也が。 「このバカが明を捜してたぞ」 「俺はバカじゃねーし!!アホのほうがしっくりくる!!」 「どうしようもないバカだな」 クレーと瑞希がため息をついたのは同時だった。ゆうりはゆうきをみると「なんで居るんだよ」とゆうきがクレーを見たときと同じ目をした。 ゆうきも同じ目をして、空気からすでに喧嘩腰になった。 「なんでゆうりが居るんだよ、あ?てめえはパソコン系の仕事してたんじゃねぇのか、このインテリ野郎が」 「俺のどこがインテリ野郎に見えるんだよ。テメェの目は節穴か」 「んだとゴラァ!!」 「ハッ、気が短けぇことで。ハゲるぞ」 「るせぇよ!!死ね!!」 「っぶねぇな!そんなに死期を早めてぇか」 「避けてんじゃねぇぞ!!失せろ!!」 槍を武器にゆうきはゆうりに攻撃を仕掛け、ゆうりはそれに応戦。 「ゆうき。俺弱いからウルトラスーパーメガミラクル強いゆうき様に鍛えて欲しいなー」 完全棒読みで無表情のクレーはゆうきに声をかける。瑞希もゆうりに「明ちゃんが見てるから暴れないで。ね?」とおっとりした声で話し掛ける。 一方の光也は明を心配していた。 「ねー、光也、保護者っていいね」 「瑞希はみんなの保護者でクレーはゆうきの保護者だよな」 明と光也の目は明後日の方を見ていた。 2012/05/28 00:16 |
prev|TOP|next |