SSS サガシモノ


「今日こそ焼きそばパンをいただく!!」

「オレも焼きそばパン食べたい」

「俺も俺も!」



四時間目の半ば、現国の時間にそんな話をする後藤、ソラ、雄平。
彼らは購買部に売っている人気のパン、いや、幻のパンと言われている焼きそばパンを狙っている。そのパンはそこら辺のコンビニで売っているパンとは味が格別に違うらしい。いつも誰かにとられてしまい、食べることが出来ないのだ。だが、今日こそはと燃える後藤をはじめ、ソラと雄平は恐いくらいに狙っている。とくに理由はない。



「校内で、もしかしたらこの市で一番運動神経がいいソラが仲間でよかった」

「そこまでいかないでしょ」

「とにかく、この教室は購買部から一番遠いっていうリスクが……」

「こらそこ。私語はやめなさーい」



現国の先生に注意された。普段なら四限目の授業をサボって購買部に行きそうなソラと雄平がこの授業をわざわざ受けているのにはそれぞれ理由があった。まず、現国の教師は美人でスタイルがいい。声も透き通るような、つい聴き入ってしまう。他の教師よりも大きいその胸は男子生徒の目の保養だ。雄平はそんな下心があるからこそ。一方のソラは、ただ単に出られないだけ。なにかとこの教師にマークされているのだ。とくにこの教師を怒らせたことがないソラはなぜマークされているのか全くわからない。



「くそババアが……」

「美空さん、なにか言いました?」

「……いえ」



地獄耳かよ、と小さく呟いた。
「あ……」と雄平が声を出す。目線の先にはドアの近くまで転がったら消ゴム。



「わり、ソラとって」



雄平とソラのアイコンタクト。雄平が「脱走するぞ!!」、ソラが「了解」という目線を送り、頷く。

ソラがイスから離れた。
教師は教卓のそばで教科書を読み上げている。
ソラが消ゴムを拾って立ち上がる。そして雄平は消ゴムを受け取る―――と見せかけてドアに手をかけ、二人が脱走。
教科書の文章を目で追っていた後藤は突然のことで頭が追い付かず、親友二人を取り合えず見送った。



――――――――――



昼休み。
後藤が急いで購買部に行くとそこに親友二人は居た。副委員長と共に。



「なんで副委員長が全部買い占めるんだよ!!」

「てかなんでオレらが行ったときに既に食べてたわけですか……っ」

「だってワタシ授業受けてないシ」

「一個くらいくれよ!!」

「副委員長は仲間だと思っていました」



などと雄平とソラは焼きそばパンを食べる副委員長の前で騒ぐが、当人は涼しい顔で食べる食べる。



「あ、後藤さん。後藤さんからも何か言ってよ」

「……副委員長」

「千佳、どうしタ?」

「裏切りはよくないですよ」

「参ったナ。千佳にいわれちゃあしょうがない」

「ちょ、なんで後藤さんだけあげるんですか!」

「俺らの分は!?」

「一コ千円で譲ってあげよウ」

「副委員長の裏切者!!」

「副委員長の馬鹿者!!」




2012/05/28 00:15



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