SSS



「……ち、くしょう……ッ!!」

「潔く諦めれば?」

「…お前に負けて、たまるか!!」

「じゃあ一生こうしてるつもり?」



ツバサが光也を嘲り笑うような目で見る。ツバサの横にいる瑞希は苦笑いを浮かべ、光也の隣にいる明は光也に「がんばれ!」とエールを送っている。それらを眺めているだけのゆうりと雪奈は「早くしろよ」「取り合えず状況を変えようよ」と言っている。

辺りに漂う緊張感はピンと張り詰め、その生みの親である光也は唸っていた頭を持ち上げ、ツバサを睨む。相変わらずツバサは余裕に満ちた嘲笑する笑みをしていた。



「もう、どうにでもなれッ!! ――あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!」

「あはははは、光也にーちゃん馬ー鹿!」

「うるせぇぇぇえ!! ツバサ黙れ!!」

「テメェが黙れ」



光也は右手に握るトランプのジョーカーをみて騒ぎに騒ぎ、ツバサに笑われ、ゆうりにどつかれた。


明、光也、ゆうり、瑞希、雪奈、ツバサはトランプでババ抜きをしていた。アジトのゴミ捨てを賭けて。
掃除はこの6人がそれぞれ分担して行い、それが終わった現在は集めたゴミを捨てに行く決定戦。ゆうりと雪奈は先に上がり、悠々と4人を眺めていた。

ツバサの後ろに回って手持ちをみている雪奈はぎょっとした。



「ツ、ツバ……!! あんた、これ、」

「しー」



雪奈の唇に己の人さし指を当てて続きを言わせないようにしてツバサは笑う。唸る光也からカードを選ぶ瑞希は雪奈の反応が気になり、首を傾げた。

瑞希が指をカードに添え、引き抜こうとすると光也の表情が悲観的なものになった。瑞希が指をずらすとその逆、光也の表情が明るくなる。また、ずらせば暗くなる。



「あっははは! 腹筋が崩壊する! あははは!」



床をバンバン叩きながらツバサが笑い、明と雪奈もそれに続く。瑞希は困ったように笑い、ゆうりは呆れていた。



「ごめんね」



と瑞希は謝ってから光也が暗い表情をしたカードを選んだ。



「光也。お前それじゃあババ抜きにならねぇだろ」

「あれっ? ツバサのカード変!」



明がじっとツバサのカードを見た。床を叩いていてたまたま見えてしまったのだ。全員がばっとツバサに注目した。

ツバサは床にカードを広げてカードを公開。
そのカードは、ちゃんと二枚ずつ綺麗に揃っていた。本来ならすでに上がってもいい組み合わせ。しばし沈黙。



「詐欺師! ペテン師!!」

「褒め言葉?」

「ちっげーよ!」



光也がツバサを睨むがツバサは涼しい顔をしているだけ。その中、瑞希は気まずそうにしていた。ゆうりと明が気にして、瑞希のカードを見れば、瑞希も揃っていた。もともと一枚だけだったため、これでそろってしまったのだ。



「瑞希もか!!」

「瑞希とツバサが抜けて、私たちも抜けたから光也と明と一騎討ちだね」

「よぉーし、頑張ろうね光也!」



明がガッツをした。その際にカードが見えた。だがそれについては誰も言わない。

勝負は見えた!とばかりに光也は張り切ったが、明の笑顔を見ていると罪悪感に狩られ、結果は光也の負けとなった。



「やった、私の勝ち!」

「あ、はは……。俺の、負け……」

「光也くん元気だして、ね?」

「女々しいな」

「しっかりしなさいって!」

「ゴミ袋そこだからねー」





2012/05/28 00:06



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