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運び屋が依頼者の元へ届けるはずだったバッグが回収屋に奪われた。

バッグでなくとも奪還屋であるルベルによく運び屋から仕事の依頼として連絡がくる。そして今日も。
今夜は早めに回収屋であるサブラージからバッグを奪還し終えたルベルは運び屋にそれを返し、自分の部屋に戻ってきていた。



「あー、疲れた……」

「お帰りー、ルベル」



ルベルの部屋に住み着く情報屋の助手は完全に他人事のように言った。いつも通り、東区の人間がよく好んで着ている浴衣を慣れた風に助手は着ていた。



「テメェはいつまでここに居るんだよ。……つか風呂!」

「風呂はわかしといたからはいっといでー」



助手は親友兼上司の情報屋と喧嘩をしたらしく、家出をしている。その逃げ道がルベルだった。ルベルにとって助手が住み着いてよかったことといえば家事をしてくれることだった。

風呂に入ろう、とルベルが上着や武器を小さな装備からはずしている時にルベルの携帯電話が鳴った。バイブがルベルに着信を必死で知らせている。その姿をじっと見ていた助手は、携帯電話をとろうと近付くルベルよりも速く携帯電話をとった。

そしてそれを耳に当て、それと会話をする。



「もしもーし」

「あ、テメッ!!」

「あー、ルベル宛?僕じゃないの?」



わざとらしく残念そうに肩をすくめた助手は携帯電話をルベルに差し出した。ルベルは「俺の携帯だから俺宛に決まってんだろ!!」と荒々しく携帯電話を奪った。



「あんだよ、夜遅くに。つか誰だ?」

『ご、ごごご、ごごめんなさい!ルベルしか頼れる人がいなくてっ』



怯えたその泣き声はルベルにとってとても聞き覚えがあった。

―――運び屋だ。



「俺さっき仕事したばっかだろ!!他を当た―――」

「報酬額を増やしてくれたら依頼を受けてもいいよ?」

「おい、テメェはすっこんでろ!!」



携帯電話で勝手に運び屋と取引をしはじめた助手から携帯電話を奪還しようとルベルは蹴りを繰り出すが助手はひらりと避けてしまった。

運び屋の性格が気弱なことをいいことに、助手は報酬額をどんどん増やしていく。

これは奪還屋であるルベルの日常。

これから再び回収屋と街を駆け回ることになることはすでに目に見えている。





2012/05/28 00:00



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