争奪戦





〈SSS〉ソラ、ルイト視点


「どういうこと?てか九条沙夜って誰」



中性的な声が、何の感情も言葉に乗せず目の前にいる金髪碧眼に問う。中性的な声の持ち主――ソラの隣にいる黒いイヤホンをつけた少年、ルイトは「はあ?」と眉間にしわを寄せた。
金髪碧眼の青年――ツバサは二人の少年、ソラとルイトに先ほど言った言葉を繰り返した。



「だから、『九条沙夜を捕まえて仕事の依頼者に引き渡せ』。この場合、依頼者は俺ね」

「いや、それぐらいはわかるんだけど、なんでオレとルイトにその女の子?を捕まえろって依頼が来るわけ?オレの専門は暗殺だって知ってる?」

「そうだ。こういう仕事はカノン様のところに依頼するかシドレたちに任せるのが普通だろ」

「九条沙夜の写真はいま渡した封筒の中に入ってるからね。移動はミントのテレポートで行くから」

「ねえ、無視?」

「無視かよ」

「拒否権なし。そんな権利、いま発動しません。もうすぐミントがこっち来るから。ま、頑張ってね」






〈サガシモノ〉理貴、陽香視点



部室の中央には学校の備品である机と椅子が設置されている。
殺風景というより、ただあまり物がないむなしい参戦部の部室にはそのかわった部活の部長と副部長が椅子に座っている。机を挟んで向き合い、座っているのは図書委員会の副委員長。
いつも通り独特で奇妙な話し方をしながらニヤリと口を歪めた。



「『九条沙夜を捕まえて仕事の依頼者に引き渡せ』ってサ!」

「なにそれ!面白そうじゃない!その仕事貰ったぁ!」

「いやあの陽香さん、いきなり机を殴りながら立たないでください」

「お黙り、ヘタレ理貴」

「ヘタレてねーよ」

「とにかく面白そうね。引き受けたわ。……仕事の依頼者って……」

「ワタシ、ワタシ。いやぁ〜、良かっタ。引き受けてくれると信じてたヨ!」

「……ていうかなんで急にそんなこと依頼するんだよ」

「参戦部なんだからそんなコト気にすんなヨ。ヒントをあげるナラ、大人の事情ってやつダ。まあ大人なんていないけどネ!!いひゃひゃひゃひゃひゃ!」






〈1/5〉ルベル、サブラージ視点




「ふざけんな!なんで俺とマセガキが同じ仕事をするんだよ!!」

「この単細胞と私が一緒に仕事をするなんてあり得ない!!」



同時に二人が叫び、「知らないわよ」と目の前にいる伝言屋のロズが困った表情をみせた。



「助手からの依頼よ。九条沙夜は助手に引き渡しておいてね」

「まてまて、なんでマセガキとなんだよ!!」

「そうだよ!こんな単細胞、足手まといじゃん!」

「んだとゴラァ!」



奪還屋の青年――ルベルと回収屋の少女――サブラージがロズに疑問を投げ掛けるが、ロズはため息をついて呆れたように「だからね」ともう一度説明に入った。



「『九条沙夜を捕まえて仕事の依頼者に引き渡せ』っていうのは私が依頼者じゃないんだからなんで二人を抜粋したのか知らないわよ。たしかにこれは運び屋に適役だと思うけど……。文句なら助手に言って」

「つかこの依頼、奪還じゃねえし」

「回収はぴったりだよね。……よし、引き受けた!オニーサンいなくても女性一人を回収するくらい朝飯前よ!むしろ邪魔!」

「喧嘩売ってんのか!?あぁ゛!?その喧嘩買ったぜ!俺もその仕事引き受けようじゃねえか!」






〈朝灰 .〉境、響、漆、純視点



「『九条沙夜を捕まえて仕事の依頼者に引き渡せ』か。これ寄生者となにか関係あんのか?」

「そもそも軍がやるような依頼か?」



LEのリーダー、もとい隊長から送られてきたメールは仕事の依頼。携帯端末機器にうつされた文字を睨みながら境と響の双子は首を同じ方向に傾げた。
それを眺めていた漆は純の隣で帽子を被りながら言った。



「もうなんでもいいじゃん。金さえ手に入れば」

「純はあんな子供に似ないで純粋な子でいてくれ」

「え、えっと……」

「んなことより仕事だ仕事。私は戦えればなんだって構わないがな」

「純、僕とパートナー交換しない?」

「交換……っ?」

「おい、行くぞテメェら!響、漆にかまうな」

「いや、あのガキに軽く殺意がわき出そうになっただけだ」




続くー、かも


2012/02/28 10:03



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