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「雷蔵っ」

「ん?ってうわぁ、どうしたの」

遠くから僕を見つけたのか、ばたばたと足音をたてて思い切り抱きついてきた三郎。腕を僕の背中にからめているせいか、身動きがとりにくい。それにどことなく落ち込んでいるからどうしようもない。

「私にはやっぱり雷蔵が一番大事だよ」

「はいはい」

「私を好きでいてくれるのは、雷蔵だけだもの」

「…勘ちゃんに何か言われたの?」

きっと三郎がこうやって子供のようにすねるのは勘ちゃん関連しかない。勘ちゃんという言葉を口にすると、ぴくりと体が震える。ああやっぱり。どうしてもうこの二人は、こんなにもじれったいのか。

「私のことを好きだと言ってくれたんだ、でも次に言ったのは、やっぱり、冗談だって」

「あらまあ…」

「嬉しかったんだ本当は。でも素直に口に出せなくて、私はこれからあいつにどう接すればいいんだろう」

「三郎、勘ちゃんはきっとね。今でもきみのことが好きさ」

「そんな、」

「口に出さなきゃ、わからないだろう?お互いさま」

「……」

「大丈夫僕はいつでもきみの味方だよ、信じてるから」

「どうして私は雷蔵を好きにならなかったのだろう…」

「さあ?三郎が好きなのは勘ちゃんなんだもの」

言っておいで、そう口にすると背中にからみついていた腕がほどかれる。そして僕の顔を見てからおでこをくっつけてありがとうと言う。僕に対しては本当に素直だというのに。その素直さを勘ちゃんにもちゃんと分けてあげなきゃだめだよ、そう加えると雷蔵は口を出しすぎたと笑われる。三郎はもう一度行ってくると二人の部屋から出て行った。どうか二人が結ばれますように。





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動脈の続きです


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