text | ナノ
二番目でもいいから、俺はお前に愛されたかった。雷蔵より愛されたいなんて思わないから、せめて二番目に俺を愛して。俺を見て、さわって、愛して。お前は雷蔵以外は他人としか見ていなくて、俺はそれが何よりもつらくて。
雷蔵以上に愛されないことなんてわかっているし、そばにいれるのは鉢屋だけしかいれないのもわかってる。俺が入る隙間なんてどこにもない。好きになってしまった俺が悪いと、そう思うしかなかった。
「鉢屋」
「なんだ」
「俺さー、少しでもいいからお前に愛されたかったなあ」
「何をぬかしたことを。雷蔵意外愛す人など私にはいない」
「…だよなあ。なんで俺お前のこと好きになっちゃったんだろ」
「そんなもの自分の心に聞けばいいことだろう」
「俺、ほんと空しい奴だよなあ」
からりと鉢屋に笑って見せれば、ちらりと見たものすぐさま元の視線へと戻っていく。ああ悲しい、俺は今鉢屋が読んでいる本にも負けたのか。はあ醜い人間とはこのことか。みじめだ。ほんと。
「鉢屋」
「さっきからなんだ」
「俺さあお前のこと好きなのは、恋慕じゃなくて憧れなのかもなあ」
「…どういうことだ」
「そばにいてくれる人がいて、変装が上手だから」
「愛されたかった、と言っていたが?」
「へへ、さっきのは冗談」
冗談なんかじゃないのにね。俺は他人しか見られていない。二番目もくそもないのだ。だったらもうきっぱりと言ってしまえばいいのだ。未練もない。きっと、こんな思いすぐにやめられるさ。幸せなんて、自ら捨ててしまったよ。
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鉢尾つらい