かくれんぼ
「奥村くーん!それに先生用意出来とりますー?」
「あっ、志摩さんそないに急かさんくても…」
「せやっ!少しくらい黙っとき!」
あいたっ!と、いう声が扉の向こう側から一段と大きく聞こえてきた。あの3人と自分が混ざるなんてやはり間違ってたんじゃないかと、雪男は1人頭を抱えていた。
「雪男ー。早くしねぇと待たせてんぞー」
「はいはいわかったから、引っ張んないでよ」
兄さんは相変わらず可愛いけど…あいつら、やっぱ居るんだよな…。いや、だからこそ!僕が兄さんを守らなくちゃいけないんだ!それが僕に課せられた使命!!
どうやら雪男は何かを決意したらしい。どうせ次のテストのことを考えてんだろうと、燐は頬を膨らませた。
「おい雪男、行くぞバカ!」
「わかってるわかってる…、てか兄さんなんか怒ってない?」
「俺が何に怒ってるってんだよ!ケッ」
あからさまな怒り方だ。雪男は燐に扉まで腕を引っ張られ何か言いたそうにしたものの、あの3人を待たせてしまっているので深くは問い詰めなかった。
―――――
所変わって広い公園。もはや広すぎてテーマパークの様に思えるがこの異様な色のブランコからして、メフィスト絡みなのが一目瞭然だ。
しかし燐はこれから何が始まるのか楽しみで堪らない様子でそんな疑問は眼中にないようだ。
「なあなあー、今日は何をするんだ?」
「ふふふ…聞いて驚いたらあきまへんでー……、なんとっ!今から皆でぇーかくれんぼやりますーっ!!」
「は?」
「「はぁ…」」
おどけた調子で遊び宣告をする志摩に雪男は間抜けな反応をした。
「おお!なにそれっ!?面白そう!!」
一方燐は満面の笑みでおおはしゃぎしている。さすがに3人もかくれんぼだけのことでこんなに喜ぶ燐を不思議な顔で眺めている。
兄さんはあまりこういう経験、無かったんで、と3人にしか聞こえない声で言うと少し罰の悪そうな素振りを見せたがすぐに納得した。
「うっしゃー!ちゃんと100数えろよな勝呂ー!」
「10や阿呆ッ!数えるでー!」
鬼決めじゃんけんで負けた勝呂のスタートコールでかくれんぼははじまった。
「……おいホクロメガネ……、何で一緒なんだよ!」
「兄さんと居ないと不安なんだよ」
「………なーんだよ雪男!ハッハッハ、兄ちゃんが体を張って守ってやるから不安になんなくていいんだぜ!」
少し顔を赤くしたあと誇らしげに言った。
いや、不安なのは兄さんなんだけどねいろんな意味で。
隠れ始めて10分ほど、燐のわきわきした様子は続いている。あぁ、可愛いな、兄さん。……何があっても兄さんが一生そんな風に笑っていられるように頑張るから、僕。
自分で何を言ってるんだとは思ったけど、この気持ちは紛れもない事実だ。
守りたいっていうのも…
「好きっていうのも…ね」
「ぬあっっ!?」
雪男の顔が近づいてくるのに気づいたのは雪男の口と自分のが触れる直前だった。キスをされて3拍の間が空き、燐の顔がボンッと茹で蛸のようになった。キスをされたということよりかは、燐は雪男の真剣な表情に射抜かれてしまったようだ。
「なっ、なんなななな!」
「兄さん変な顔っ!」
「奥村ツインズ発見や」
「ですねー」
あっと気づいた時にはもう遅かった。大きな声で話しすぎたようだ。そして勝呂が呆れたような表情で2人に話しかける。
「なんや、色んな意味で熱かったわあんたら」
「「見られてたっ!?」」
かくれんぼ(クソッ!雪男のバカ!!)
(誰かーっ!1人忘れてるんとちゃいますかーっ!!)
――――――――――
初青祓作品。
もっと甘くてよかった気がする!
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