ふわりふわり

男子寮、2人しか暮らしていないその1室。仕切りのない中、燐と雪男はそれぞれの机でやるべきことをやる。雪男には祓魔塾の講師であるせいか、終わらせなければいけない書類が山程あるのだ。しかし嫌がることもなければ休む様子も全くなく、優秀な仕事の速さからはとても15歳とは思えない。


ガサリ、ガサガサガサ。燐の机の方から勉強をしているはずの場に相応しくない音が聞こえる。雪男は、作業を進める手は止まっていないもののわずかに顔をしかめた。

兄さん…3分おきに勉強もしないで……。

普通に座っているだけでは残念ながら燐の方の机の様子は見えないが、確実にサボっていると、雪男は確信する。これ以上放っておくと自分の作業に支障をきたすかもしれないし、燐にとってもよくない。判断した末、雪男は燐に話しかける。


「兄さん、勉強やらないといい加減怒るよ。」

「は、はっ!?勉強ー…してるに決まってんだろっ!?」

あくまでもやっているふりを決め込む気か。もう少し追い込んでみよう。

「さっきから勉強と関係ないような音出してたよね?」

「それはっ…あれだ、定規どこかなぁーと、探して、て…」


体をのけ反らせてこちらを覗く雪男の姿を見た燐は、表情を固まらせたまま冷や汗をどっさりかいている。
燐は3分おきというバレにくい時間差で包み袋をとって食べるタイプの菓子を食べていたのだ。もちろんそのゴミも散らばっているものだから一瞬でバレる。そこまで頭が回らなかったのだろうか。


完全に逃れられない状況下にある燐を雪男は冷たい笑顔で見つめた。それが恐すぎて燐は今にも泣きそうな顔になる。


「随分余裕そうじゃない兄さん」

「だって…わかんねぇし、めんどいし、雪男には聞けねぇし…」

「ちょっと待って兄さん、僕に聞けないって…何故?」

「忙しそうなお前の邪魔、したくなかったんだよ…」


正直今の兄さんはすごくかわいかった。普段もだけど、と雪男は心の中で言った。平静を保つために眼鏡を指先でクイッと上げる。一方燐は、尻尾までシュンと全体的に垂れ下がっていた。


「兄さんが僕に聞いちゃいけない時なんてないんだから、わからない時は迷わず聞いてよ?」

「お、怒ってないのか?」

「それはまあ、少し」

折角もとに戻りかけていた調子を再び下げてしまった。

「ほら、僕が教えるから今からちゃんとやろう?」

「でも…」

「僕の書類は大体終わってるから、大丈夫だよ」

「…礼なんて言わねぇからな」


いいよ別にと言うと雪男は座っていた椅子から立ち上がり、その椅子を燐の隣へと移動させ腰かけた。



あまりに燐がわからない所が多すぎて目眩がしそうになるも、1つずつ、丁寧に教えてやる。時々挫折さそうになっていたが雪男の教えを一生懸命聞き、1問ずつ確実に解いていった。




「だああー疲れたーっ!!」

「よく頑張ったね兄さん、偉いよ」


数時間後、やっと終えることが出来た。雪男が頑張りを評価してやると燐は嬉しそうに笑い、尻尾を左右に振った。そして不意にその尻尾を雪男に絡ませ片手で腕を掴む。


「今夜は…してやっても、いい……」

「楽しみにしとくよ」


焦ったり慌てることもなく、雪男は燐の誘いを受けてやった。自分を掴む腕の、二の腕あたりをそろりと指先でなぞるとびっくりされたのか一瞬で離される。夕飯の支度をすると、燐は立ち上がって歩いていってしまった。



―――――



燐が自分のベッドで漫画を読んでいると雪男がこちらへ来た。これから何をするのか察すると、胸の高鳴りを振り払うように1つ息をはいて漫画をベッドの端に置く。最初はいきなり覆い被さってくるわけでもなく、ベッドに腰を下ろす。


「何?緊張してんの?」

「すっ、るわけねぇだろ!?」

「はぁ…、まあいいけど…」


ムードも何もない中、雪男は体の向きを変えて燐の上に乗るとゆっくりと口づけをしてやった。1回触れるだけのをして、2回目は長いものをした。小さく空いた口の隙間から舌を差し込む。上顎やあらゆる所を舌で舐めてやると燐の足がもぞもぞと動く。顔も先程とは比べ物にならないくらい火照っているようだ。ある程度舐めるとお互いの舌を絡ませ合う。

「んぅ……、っ」

口端のわずかな隙間から甘い吐息が漏れる。燐の衣服の下へ手を潜り込ませ胸の突起を摘まんでやった。燐は思わず奥へ舌を縮こませるが唇の角度を変えて奥まで来た雪男の舌が再び絡みついた。

「んんっ…ふ、…っ」

「………」

「んぁっ、ハァ……ゆ、きおぉ」


燐は毎回のことだが行為をする時は普段とは別物、理性はなんとか残っているものの、焦点の合わない目になりやたらと体に絡みついてくるのだ。今もキスを止めたとたんに雪男の肩へと体を起こし頭を乗せる。


「服っ…、脱げよぉ…」

「はいはい、兄さんも僕が脱がしてあげる…」

燐の捲り上がった衣服をはいでやる。ついでに下も脱がせてやると背中にまわされた腕に力がこもった。

「兄さん、そんなんじゃ僕脱げないよ」

「…………んー……」

衣服を掴んでいた手から開放されると素早く頭を通してシャツを脱ぐ。露になった雪男の素肌へ燐はほどいていた手を絡ませに戻った。自分に寄りかからせたままにしておき、雪男は手を下へと向かわせた。


「ひぁっ、や、あ…」

「うわぁ…、もうこんなになってる」

「う、るさっ…んぁっ」


燐の自身を根元から丁寧に刺激するとくぐもった声があがった。肩に乗っている燐の耳を甘噛みする。ついでに根元から先端へと手を移動させ指の腹で強く葬ってやると少し大きな声で啼きながら体を仰け反らせた。


「ぅ、ぁあっ…はんんッ」

「兄さん、やらし…」

「ああっ!つよ、く…すなぁっ……」


そろそろ燐がイクのではないかと思いスライドさせる手を速める。それが気持ちいいのか、燐は無意識に腰を揺らしながら雪男の肩にかぷりと軽く噛みついた。八重歯が皮膚を傷つける痛みに片目を瞑って耐えながら、悪い子…と言う。拍子に掌をぐっと握り締めてやった。


「そな、ぁ…もっ、う!」

「イキなよ」


アァッ!という声と共に燐は呆気なく達してしまう。抱き合う体勢だったため雪男の腹にも燐の吐き出したものがかかった。体を雪男に預けながら息を整えていると、それに気づき手遅れな謝罪を口にした。何とも言えない顔でこちらを見る燐にキスを落とし、燐の頭の後ろと片手を持って最初の体勢へと戻す。

「……ぁ、…ゆきお…」

先程放たれたものを指にしっかり絡ませ、燐の蕾へくぷりと侵入させた。動かしたり掻き回したりしほぐす。時々前立腺を擦ってやると気持ち良さそうに体中が疼いていた。一連の動作が幾度か繰り返されると雪男は指を抜いて下に着ている物を剥いだ。

「挿れるよ…」

とろとろになった場所へ雪男は自身をあてがい、ゆっくりと腰を進めていく。


「ひあぁっ…はッ、痛……ァ…」

「力抜いて…」


深くまで入ると律動を始める。律動のペースが速まると掴む所がない燐はベッドのシーツを引っ掻くようにして耐える。時折突いてくる場所が気持ちよくてたまらない。


「あ、あっ!そこ、や…、あッ!」

「ヤバ…。……好きだよ兄さん」

「や、はぁ…、ゆっ、ゆきお……、好きッ」


足を完全に開かれ激しく突かれる。どうしようもない痛みと快感に襲われ、死んでしまうのではとさえ思う。

燐の締め付けが強くなってきた。汗でまとわりつく前髪の隙間から艷のある表情の燐が見える。やはり限界のようだ。


「ふ、…んぅ、っ…あぁ……、っ!」

「く…兄さ……キツいよ…」

「もっ、…イク、ッ!」

「……ゥ、ハ…ッ……!」


燐が2度目の絶頂を向かえた。瞬間的に強く締め付けられ雪男も達してしまう。トサッと燐の上に倒れ込むと笑っている顔が見えた。


「雪男ぉ…抱き締めろ…」

「ほんとかわいいんだから……」


燐を優しく包み込む。頭を撫でていると目がとろんとしてきた。ほんの数分で規則正しい寝息が聞こえた。



ふわりふわり
(僕達を邪魔する壁なんか…)






――――――――――――――――
なんて初々しいえろ作品…!



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