夏と君と

2人きりの部屋、かいらしい表情で寝る奥村、何もでけへん俺。このままどれほどの時間がたってまうんやろ。


勉強を教えてほしいと言われさっきまでは普通に、ちゃんとやっていたはずなのに、寄り添ってきた燐を振り払うことも出来ずそのまま膝の上で寝かせてしまった。


「………ん…………」

「俺もつくづく甘いやつや…」


膝の上でもぞもぞした燐の髪を優しく撫でてやる。すると燐の口元が緩くなった気がしたが、気のせいだろう。


夏はこう眠くなるから勉強をするには勝呂的には適さない。嫌いという訳でもないが気にくわないのだ。でもまあこんなこともあるのなら夏も悪くない、と勝呂は心の奥底で思った。

自分の膝の上の燐がとてもいとおしく感じ、勝呂が貸してやってたヘアピンで露になっているおでこにキスを落としてやった。


「何…してんだよ……」

「起こしてもうたか?すまん、堪忍な」

「いや…少し前から意識だけはあったし……」

「…ほうか」


半目で寝起き声の燐の頬を触ると、くすぐったそうな顔をする。1度だけ伸びをして膝の上から起き上がる。


「もう起きるんか?」

「ん…」


軽い呼びかけに遠い目をしている燐はコクりと頷いた。そしてそのまま横から勝呂に抱きついた。


「何しとんのや…」

「甘えてんだよ……」

「恥っずかしいやつやなぁ」

「すぐろもだろぉ…」


そうかもな、と思った。いつもなら暑苦しいと退けるところを今日は好きにさせてやる。回された腕に力が入ったところからすると、眠気はなくなったようだ。


「勝呂…、好きだ」

「俺も…まあ、…好っきゃで?」


やけに素直な燐にたじろいだが、ちゃんと言ってやった。勝呂は少し考えるように何もない所を見つめ、燐にささやかな提案をしてやった。


「もう勉強せぇへんやろ…?」

「……ああ」

「なんか冷たいもんでも食べ行くか」

「えっ……いいのか?」

「たまにはええやろ」

「さんきゅーな勝呂」


顔を上げる燐の唇に触れるだけのキスを。


「ほな行こか」


元気よく相づちをうってやると勝呂は嬉しいのか、頬は赤く染まっているものの口角をあげて微笑んだ。わずかな行為に燐はたくさんの幸せを感じた気がした。

2人は並んで部屋から外へと出ていった。



夏と君と
(夏は意外とええもんやな)
(さっきの勝呂、かっこよかった…)





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燐は基本的にかっこいいと思うと照れるような子であって欲しい。



since.6.11.

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