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※来神時代






あ、しまったと思った時にはもう遅かった。立ち上がった瞬間襲ってきた血の気が引いていく感覚。
頭から血管という血管を通って液体が音を立てて落ちていく。視界が黒く染まり、平衡感覚が失われてく。



「なまえっ!?」



友人の驚いたような声。そりゃそうだ。さっきまで普通に階段で並んでお弁当食べてた友達が委員会に行くといって立ち上がった途端に階段から転げ落ちる方向に倒れこんでいけば、そりゃ驚くに決まってる。
え、何か持病でもあるのかって、そこまで大層なものじゃない。貧血だよ貧血。
…今、なんだそんなもんかとか思った奴表に出やがれ。結構大変なんだからな貧血って。たちくらみとかしょっちゅうだし、顔色悪いって好きでもないレバーとかほうれん草とか大量に食べさせられたりね。



『…も、やんなるな』



それにしても階段から落ちるというのに余裕あるな自分。貧血のおかげで視界真っ暗なうえ平衡感覚ないから落ちてるって意識が薄いのかも。

地面に叩き付けられたらそうも言ってられないだろうけど階段の半ばで食べてたんだからそこまで酷いことにもならないんじゃないかと思う。てか、ならないことを願う。
…しかし、次の瞬間襲ってきたのは地面に叩きつけられる衝撃じゃあなかった。



『ぐえっ!!』



なのに何故こんな乙女らしかぬ声を上げる羽目になったのかと言うと、それは喉に直接的な負担がかかったからだ。
えーとつまり、誰かに襟首を掴まれたかなんかして、私は地面にキスする直前に止められたらしい。
有り難いっちゃ有り難いが…喉にかかった衝撃は半端なかった。負担が一点だった分寧ろ痛みが大きかったんじゃなかろうか。
咳き込む私に乱暴なやり方だったが助けてくれた誰かさんは掴む点を腕にかえ、引き起こしてくれた。



「…お前、同じクラスの…なんつったっけ」



未だちかちかと霞む目を抑えて顔を上げる。声からしてクラスの男子らしい。聞き覚えがあまりない声だから、あまり話したことない人かなと思いながら笑いかけた。



『助けてくれてありがと』




言いながらだんだんと戻ってきた視界に明るい金色の髪を見つけて首を傾げる。
こんな派手な髪のクラスメイトいたっけ?そんな疑問は背後から聞こえてきた友達の声のおかげで吹っ飛んだ。友達の叫んだ名前はこの学校で有名過ぎる人物のものだったから。
やっと戻ってきた視界にその顔を見留めて嘘であってくれという願いも虚しく、自分を見下ろすその顔は見慣れない、しかしばっちり見覚えのある顔だった。



「大丈夫か?」



『え、ええ、ただの貧血です、から…っ』



答えると同時に再び頭から血が下がっていく感覚。頭から血管という血管を通って液体が音を立てて落ちていく。視界が黒く染まり、平衡感覚が失われてく。
これは貧血じゃなくて驚きすぎたせいなんじゃないかな。目の前から慌てたような声が聞こえるが、再びちかちかしはじめた視界にはその顔は朧にしか映らない。
とりあえず血が足りなくて曖昧になっている思考で意外と優しい人だったんだなと場違いな思考を巡らせて、自分が抱き上げられ運ばれているらしい浮遊感には気づいていないことにすることにした。










目眩みながらも
でも、戻り始めた視界に映り込むのはやはり








──────
色鮮やかに映るに続く。

常に貧血気味なせいで、献血弾かれたりすると泣きたくなります。




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