DRRR!! | ナノ
「ねえ、俺もう一つ二つ偽名が欲しいんだけど、何か考えてくれない?」
新宿某高級マンションで発せられたあからさまに犯罪臭漂う注文。
極々普通の一般人だと自負するなまえは楽しげにテーブルの向かいからこちらを見ている臨也の視線を感じながらも今まで読んでいた本から目を離すことなく答えた。
『無理。自分で考えれば?私を巻き込もうとしないでっていつも言ってるでしょ』
「つれないね。俺は寧ろ君を巻き込んで犯罪者にして囲み込みたいんだけど」
『その思考が一番犯罪くさい』
思わず顔をしかめて目線をあげれば思惑通りと言わんばかりの笑顔が目に入ってしまいテンションが急降下した。…いや、さっきから既に底辺目掛けてまっしぐらに下降し始めていたが。
何故かと云えばあの笑顔はこちらを構いたくて仕方ない笑顔だからだ。無視し続けたらそれは酷いことになる。
「あ、今無視し続けたらどうなることやらって思ったでしょ。それはもちろん×××の○○○でピ──な展開に」
『とりあえず黙れ。今すぐ黙れ。東京湾に身投げしてくれて構わないから黙れ』
「やだなあ、そうなったら一番困るのはなまえのく・せ・に☆」
…呆れて何も言う気がしない。誰でもいい、誰かこの馬鹿を黙らせてくれないだろうか。
「うふふ、嫌そうな顔も可愛いよ。だから大好きな恋人の頼みだと思って偽名くらい考えてよ」
『うふふ言うなキモイ。あと何がだからなのかさっぱりだぞ。嫌なものは嫌だ』
スパッと切り捨てると臨也は何か余計な事に気づいたらしく、身を乗り出してきた。
一応言わせてもらうが成人男子が両肘ついて身を乗り出して上目づかいしても可愛くないからな。率直に言ってあっちゃいけない光景だからな。
「そんなに嫌なんだ?なんでかな、なんでかなぁ?是非教えてもらいたいよ」
『……大したことじゃない』
「そういう言い方されちゃうと余計気になるなぁ!俺に嘘なんて通じないのはわかってるでしょ?ほら、さっさと吐きなよ。じゃないと本当にどうなるかわかんないよ?」
この鬼畜悪魔め。絶対に本気の目なのを見て一瞬にして心の天秤はプライドより多少の羞恥を取った。ここで下手にプライドを取ったら寧ろ後で徹底的に潰される。
なんでこんな奴の恋人をしてるのか自問自答してみるが答えが見つかるはずもなく、ため息と共に理由を吐き出す。
『なんか、さ。臨也って呼ぶの好きなんだよ。滅多にない名前のくせにやたら響きいいし、お前に似合ってるし、私がお前に本名以外で呼ばれるの考えたりすると凄い嫌だし』
理由を列挙してみれば目の前の馬鹿は一瞬目を見開くと嬉しそうに相好を崩して顔を寄せ、笑った。
「じゃあさ…
もっと、呼んで
『臨也臨也臨也うざや臨也臨也うざや臨也臨也臨也うざやうざや…』
「あれ?なんか途中から違う名前になってるよ?え、あれ?どういうこと?」
──────
臨也とツンデレヒロインを書いてみたくて書いたのだけれど…宇良の書くツンデレはツンデレじゃないですねこれ。
それにしても宇良の書く臨也は大概酷いな…
[Back]