〜2022.6.25 花井
“梓くん”と呼ぶと、彼は決まって睨んでくる。
「そんなに嫌?」
「そんなに嫌なの。だから、名前では呼ぶなよな」
彼は溜息をつきながら言った。
「“梓”って名前はあなたに似合っていて、素敵なのに」
ぽつりと呟くと彼は顔を赤くして、それから、顔を隠すかのように思い切り横を向いた。
「……それでも呼ぶなよ」
そう言った彼の口元は、心做しか緩んでいるように思えた。
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