2022.6 衣替え 貴澄


先週、テレビの天気予報で「これからは夏のような暑さの日が続くでしょう」って確かに言っていた。
だから張り切ってこの間のお休みの日にタンスの中身を入れ替えて衣替えをした。それなのに、今日は暑いどころか寒い。


窓の外を眺めてスマホで天気予報を見て。寒い気がするだけかなとも思ってみたけれど、やっぱりスマホの天気予報に出てきた気温を見てみると記録的にも寒くって。

タンスの中の洋服たちとにらめっこしながら少しでも暖かそうな服装を考える。

すると遅れてリビングにやって来た貴澄が「おはよう、今日は寒いね」と眉を下げながら隣に並んで座った。

「もしかして今日の服探してるの?」

私と洋服たちを交互に見た貴澄は首を傾げて言った。そんな貴澄の名前を呼んで大袈裟に泣きつけば、あははと楽しそうに笑われる。

「……タンスの中身、衣替えしちゃった」
「この間頑張ってたよね」
「うん、貴澄も手伝ってくれたね」
「あの日は雨で暇だったもんね、お互いに」

そうだよねと返事をすると、張り切って衣替えをしていたこの間の自分も思い出す。
貴澄は最初から最後までずっと私の衣替えを手伝ってくれていて、…………ってあれ? もしかして貴澄はまだ衣替えしてない……?

「……そういえば貴澄はまだ衣替えしてなかったね」

今更ただただ自分の衣替えを貴澄に手伝わせていただけだったことを思い出して落ち込むと、貴澄が「僕、あの日は楽しかったんだけどなぁ」とわざとらしく唇を尖らせる。
それからふふっと笑うと立ち上がった貴澄は笑顔のまま手を引いて私のことも立ち上がられせてくれて。そのまま手を引かれて貴澄のタンスの前へと連れられる。

「今日は僕の服にしない? まだ春物だよ」

繋いでない方の手でタンスへと手を伸ばした貴澄は、私の返事も待たずに「これなんてどうかな?」ともう洋服を引っ張り出している。

そうして貴澄におすすめされた服を着てみたら分かっていたことだけれど大きくて。
ダボダボな袖を捲ろうか折ろうかこのままでいようかと頭を悩ませていたら、ひょっこり覗き込んできた貴澄にぎゅっと抱きしめられた。

「突然どうしたの?」
「ふふ、彼シャツってやつだな〜って思ったら嬉しくなっちゃった。僕の服、キミにはやっぱり大きいね」

目を細めて笑う貴澄が頬を染める。そんな貴澄の腕の中から顔を上げたら、貴澄と目が合った。

「やっぱりいいもんですか、彼シャツは」
「いいどころか最高ですよ」

そんなやり取りをしながら顔を見合わせてクスクス笑う。


すると、デートに行くから洋服を探していたということはもうすっかり頭からなくなっていて。どちらからともなく唇を重ねると、もう一度目が合って笑った。


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