今年はこんなクリスマス (黒バス/高尾和成)

朝から夕方まではバスケのウインターカップの試合を観て、夕飯には近くのファーストフード店までチキンを買いに行く。それが今年のクリスマスの私たちの予定。

手を繋いでイルミネーションを見に行って、少し背伸びしたお店で夕飯を食べるのだってきっと素敵な思い出になるはずだけど、いつもとは違う一日を大好きな人と一緒に贅沢に家でのんびりするのも悪くはない。


「ほら早く!次の試合始まるよ」
「へいへーいっと」

彼を呼べば二つのマグカップを持って台所からやって来た。これお前の分と渡されたマグカップを受け取ってお礼を言うと、ぴったりと彼にくっつく。

「もしかして寒い?」
「そんなことないけど。くっつきたいなぁって」
「いやー、俺の彼女かーわいいわ。マジで」

にっと笑った彼に頭をわしゃわしゃと撫でられて、も〜と言いながら頭に添えられた手からなんとか抜け出せば、悪い悪いとやっぱり彼は笑う。そんな彼を真正面から睨んでみても私を見て楽しそうだ。

「高尾のさ〜、そういう所ずるい!」
「そういう所って?」

不思議そうに首を傾げる彼を前に、今思ったことを正直に言うことが少し恥ずかしいような気もした。だけど視野の広い彼からは逃げることなんて出来なくて。気になる? と呟けば、当たり前だろ〜と顔を覗き込んできた彼が瞳いっぱいに私だけを映した。

「そういう……、私を甘やかしてくれる所、ずるい」

ぽつりぽつりと呟けば、目をまんまるくした彼が次の瞬間にはふはっと吹き出しケラケラと笑う。

「別に甘やかしてるわけじゃねぇんだけどな。ただ思ったことを言ってるだけで」
「……うわぁ、タチ悪い。私が高尾のこと大好きだって分かってるの」

わざとらしく溜息を吐けば、それは俺のセリフなんだけどなと彼もまた溜息を吐いた。

「俺だってお前のことが大好きなゆえの愛情表現じゃん。俺の気持ち伝わってないの?」
「伝わってます、……十分過ぎるくらいに」
「それなら良かった」

余裕がありそうに見えつつも少しはにかみながら好きだぜと耳元で囁かれた言葉も、私の名前を呼ぶ彼の声も、重なった唇も、どれもが全て愛おしくて。やっぱり今日は家で過ごして良かったと心から思った。

試合開始を告げるブザーが鳴ったから慌てて離れると、これからのクリスマスもこうやって過ごすのも悪くないって思っちまうよなぁと彼が困ったように笑った。

私も、と答える前に彼の視線は画面の向こうでバスケをする高校生たちに奪われてしまったけれど、バスケが大好きな彼の隣でバスケを観る。そんなクリスマスも素敵だと私はやっぱり思って、つい笑みが零れた。



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