そして当日、電車が遅れたせいで待ち合わせよりも20分ほど遅れて着いた私は入場料を払ってすぐ更衣室へと向かった。友達の名前はもう中に入ってるみたいだし、私も早く着替えなきゃ!
「きゃーっ!黒ビキニの名前ちゃんメニアック!丁度水着が隠れるくらいのパーカーメニアック…!!!」
「…なんで居るの」
更衣室を飛び出して休憩場にいる友達の名前の元へ向かえば何故かそこには姉さんがカメラを構えてトロピカルジュースを飲んでいた。あれ、私夏目さんと凜々蝶ちゃんにちゃんと口止めしたよね?わざわざお菓子まで買ってお願いしたよね?
「そ・れ・は、」
「もう、ここにも居ないなんて…」
「どうした?」
「どこ探してもあの子が居ないのよ、一緒に食べようとアイス買って来たのに…」
「そういや朝から見てないな」
「あれー、二人ともどうしたの〜?」
「何をしているんだ?」
「あ、丁度いいところに!名前ちゃん知らない?」
「あー、名前たんね。そういえばボクも朝から見てないな〜」
「わ、私も知らないぞ!」
「……凜々蝶ちゃん?」
「な、なんだ…?」
「ちょーっとこっちにいらっしゃい」
「ひっ…!」
「ということがあって、凜々蝶ちゃんが全部教えてくれたの☆」
「凜々蝶ちゃん…あれだけ言わないでねってお願いしたのにっ…!!!!!」
言うつもりはなかったのだろうけど…注意すべきだったのは凜々蝶ちゃんの演技力の方だったか…。確かに、凜々蝶ちゃんが人を騙してるとことか想像できないもんね…。
「お姉さん一人で来たんですか?」
「ううんっ、ちゃんと連れが居るわよ♪」
姉さんは友達の名前に微笑みかけた後「アレ」と言って更衣室の方を指差した。…嫌な予感がする。
「野ばらねーさん、これ一人で持って歩くのは無理があるってー」
指差した方へ目を向ければパラソルやらマットを抱え、大きな鞄を肩にぶら下げた反ノ塚さんが居た。
(…ああ、一番見られたくなかったのに!)
私は皆に気付かれないようにパーカーのファスナーを閉めた。