(あー、もう最悪だ)


図書館で夏休みの課題として出されたレポートを終わらせようと妖館を出たのが四時間程前、レポートを終わらせたのが五分程前、それまで晴れていたのに荷物を纏めて外へ出た途端これだ。

ついさっきまで晴れていたのに、なんだこれは。雨の音で耳が痛い。誰だ、今日は快晴、真夏日なんて言った奴は。はぁ、とため息を吐いて壁に背を預ける。折り畳みでも鞄に入れておけば良かったなぁ…。

(…電話して迎えに来てもらおうかな)

そう思って携帯を取り出したけど、誰にかければいいのか分からない。ちょっと前なら何も考えず姉さんにかけていた。でもあの日から顔を会わせるのが気まずく感じて……姉さんで気まずさを感じるのだ、反ノ塚さんについては言うまでもない。

SSのお仕事もあるし、高校生組も自分の課題がある。…というより、こんな土砂降りの雨の中迎えに来てもらうことに罪悪感が湧いてしまって指が呼び出しを押せない。雨が止むまで待つしかないかと携帯をポケットに押し込んで一秒でも早く雨が止むよう願う。でもどういうわけか、雨はもっと激しさを増した。神様の馬鹿野郎ー!私が一体何をしたっていうんだー!と心の中で暴言を吐いてみるけれどそれが神様に届くはずもない。

もう中に入っていようかな、と今日何度目か分からないため息を吐いた時だった。


「名前!」
「え、反ノ塚さん…!?」


雨の中傘を差してこっちに走って来たのは間違いなく反ノ塚さんで

「な、なんで…」
「はぁ…はぁ…お前が、図書館に居るって聞いて…傘無くて困ってんじゃないかと…」
「わざわざ、来てくれたんですか…?」
「おう…」
「……あの、私の分は……?」
「ん?……あ。」

肩で息をする反ノ塚さんの手には今差している分しかなくて、自分の手を確認すると

「忘れてきた。」

とのほほんとした笑みを浮かべてそう言った。


「ま、いいじゃん。一本あれば十分十分。」
「え、ちょ…!」

ぐいっと私の手を引っ張り傘の中に入れる。これは俗にいう相合傘というやつでは……

「帰るぞ。」

困惑する私に気付いているのかいないのか(たぶん後者だろう)、そう言って一歩を踏み出した。
 
 



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