クラスメイト達が忙しそうに動き回っているグラウンドを眺めながら珈琲を啜る、この暑い中ちゃんと体育に参加するなんて偉いなーなんて思っている私は簡単に言えばサボりの真っ最中だ。

「おー、名字じゃん」

屋上に入って来たのは同じクラスの反ノ塚、相変わらず気怠そうななんとも言えない雰囲気を醸し出している。

「サボり?」
「そっちこそ」
「だって暑いんだもん」
「俺も同じ理由」

すとん、と隣に腰を下ろして私と同じようにグラウンドを眺めると「おっ、あの子胸でかくね?」なんてどうでもいいことを言い始めた。

「そういや、夏場に名字が体育の授業受けてるとこ見たことないかも」
「自慢じゃないけど一年の頃から受けてないわよ」
「うん、それ自慢じゃないよね。寧ろ隠すべきだよね」

夏場の体育は嫌いだった。小さい頃から胸が大きくて走ったりする度に揺れるし、男子から変な目で見られたり胸目当てで近づかれたり……まぁ、仕方ないんだけどね、多感な時期に男女一緒に体育させる学校側が悪いんだよ。幸いこの学校は保健と体育両方合わせて成績を出すから体育の授業を全部休んでも保健さえ点数が取れていれば問題ない、だからこうやってのんびりしていられるのだけれど。

「名字も胸でかいよな」
「どこ見てんの、目潰すわよ」
「ごめんなさい」

空っぽになった缶を置いて自分の胸元に視線を落とせばコンプレックスの塊である膨らみが視界に入った。ああ、こんなのあったって何の得もないのにどうして世の中の女の子は欲しがるのだろう…なんて考えたところで私に分かるわけないか。

「そういや彼氏とは上手くいってんの?」
「ああ、別れたよ」
「え、なんで」
「アイツ胸目当てで近づいてきたから私のこと知って幻滅でもしたんじゃない?胸がでかくて素直で優しい彼女が欲しかったみたいよ」

私はその理想と真逆だっただけ、だいたい近づいてきた理由が分かってたからそんなショックも受けなかったけどさすがに十何回目も同じ理由で振られたら自分の性格を恨みたくなってくる。でも変えられると思ってないからもう諦めに入ってるけど。

「そっかー」
「もっと可愛い、素直で女の子らしい性格で生まれてくれば良かったかも」
「でも俺、名字のこと可愛いと思うけど」
「…反ノ塚は目が悪いんだね。あ、頭か。」
「いや、可愛いっていうより…好きなのかな」
「……は?」
「俺、名字と一緒に居るの好き」

反ノ塚はそう言って笑った。少しだけ彼の耳が赤く見えたのも、私の顔が熱く感じるのもきっとこれは


全部、夏のせい。




アンケートで「友達以上恋人未満な甘酸っぱい感じのお話」というコメントがあったので書いてみました。……これは甘酸っぱい、のか…?(オロオロ)

初反ノ塚さんがこれで申し訳ない。



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