ここ数日、前にも増して頭がボーっとする。前よりも濃い靄がかかっているみたいで……人の話もスムーズに頭の中に入って来なくて周りから心配されるほどだ。

「お前、今日もぼーっとしてんな」
「…反ノ塚君」
「体調悪いなら早退した方がいいんじゃね?先生には俺から言っといてやるからさ」
「……そうする」
「ミケに連絡はしなくていいのか?」
「ん、どこか痛いってわけでもないし大丈夫。歩いて帰るよ」
「そっか、じゃ気を付けて帰れよ」







(頭がぼーっとする…)

まるで夢の中で浮遊しているみたいに、現実味がなく実感が何も無い。周りの景色が視界には入っているものの、ふとした瞬間自分が今どこに居るのか分からなくなる。駄目だ、しっかりしないと…

「っ!?なんで、」

制服が麻の法衣へと変わっていく、人間の姿から妖怪の姿へ…自分の意思ではないのに、何故…



「現れたみたいだね」
『貴方は…!』

困惑している私の目の前に現れたのは数日前に私に怪我を負わせたあの少年だった。満足げにほほ笑むと彼は自分の胸元を指差した。

「言っただろう?プレゼントって」
『…っ、私に何をしたの!?』
「百鬼夜行に参加できるチケットみたいなものさ。君のここにあるでしょ?黒い痣が」
『!』
「それは呪いの証。潜伏期間の長さは区区だけど、それが現れたってことはアンタはもうすぐ自我の消えたただの妖怪になるってこと。呪いを解く方法は一つ、アンタが死ぬかオレを殺すかの二つだけ。まぁ、今の体でアンタが俺を殺せるとも思えないけどね」


「大人しくオレの仲間になりなよ、自我の消えたただの妖怪になったアンタを一緒に暮らしてる先祖返りの奴らは受け入れてはくれないよ?彼氏の御狐神だって拒むに決まってる」

差し出された手を叩き落とす、私の行動は想定内だったらしい、特に驚いた様子もなく彼はただじっと私を見つめたままだった。

『断るっ…貴方の仲間になるくらいだったらここで自害した方がマシよ』
「…そう言うと思ったよ。ま、自我が消えてただの妖怪になる方が先か、アンタが先に自害するのが先か…暇つぶしに見させてもらうよ」

にっこりと笑みを浮かべるとくるりと私に背を向けた。

「今のアンタを見る限り、今日を入れて後二日というところだろうね。精々頑張りなよ」

嘲笑を含んだ声でそう言って彼は姿を消した。




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