「まさかこんなに遅くなるなんて、ほんと予想外だよ…!」

真っ暗な夜道、大粒の雨に打たれながら妖館へと続く帰路をひたすら走る。いつもなら早く終わる委員の仕事も文化祭が近づいているせいかいつもの倍時間がかかってしまった。

今更委員になったことを後悔しても遅いけど労働させられて帰りが遅くなった挙句雨に打たれてびしょ濡れになるなんて…後悔の一つや二つしたくなる。妖館に戻ったら絶対説教されるだろうなぁ…黒い笑みを浮かべている彼の姿が浮かんで足が止まりそうになったけど、これ以上帰りが遅くなったらもっと怖いお仕置きが待っているような気がして止まりかけた足を必死に動かした。



「やっと見つけたよ」

道を遮るように目の前にすっと人影が立った。暗いのと雨のせいではっきりとその顔や体は見えないけど声の高さからして男の子だろう、私と同じで傘を差していないずぶ濡れ状態の彼に誰かと聞けば可笑しそうに笑われた

「オレのこと覚えてないの?」
「…悪いけど覚えてないわ、男の子の知り合いは一人しかいないの」

そう返せば彼の纏う空気が少しだけ変わる、表情は見えないけど今の言葉で機嫌を悪くしたのは確かだ。殺気のような、冷たく重い空気を纏った彼に一歩後ずさる。危険だと頭の中で警鐘が鳴り響く。

「そう、君は相変わらずオレを認める気はないんだね」
「…」
「まあいいや。ねぇ、オレの仲間になってよ」
「…仲間…?」
「百鬼夜行だよ」
「……一体、何を…!?」

目の前にいる彼が人の姿から犬の姿へ変わる、まさか私と同じ先祖返り!?困惑する私に彼は犬の姿で言う、「仲間になれ」と。

『アンタが居ると便利なんだ。その力を使わないなんて勿体ないぜ、天狗さん?』
「…断る、と言っても諦めてはくれないんでしょうね」

人の姿から天狗の姿へ、葉団扇を手に持ち構えれば彼は困ったようにため息を吐いた。

『戦うつもりはなかったんだけど…仕方ないよ、ね!!!!!』

こちらに向かって走ってくる彼に向けて葉団扇を振れば風が彼に襲い掛かる、簡単に家一軒飛ばすことの出来るその風は彼を遥か遠くへ吹き飛ばした。自分から戦いを仕掛けて来た癖に弱かったな、なんて彼が飛ばされた方を眺めているとカサリと背後から音がした

『?……っ!?』

右腹部に痛みが走る、目をやれば私の腹部に獣の姿をした妖怪が噛みついていた。突然のことに頭が真っ白になったけどすぐ我に返って懐刀をその妖怪の頭に突き刺す

『はぁっ、はぁ…』

血が出ている腹部を急いで押さえたけど雨のせいか血は止まってはくれない。急に動いたからか、それとも出血のせいか…ドクンドクンと心臓が大きく脈打ち呼吸がし辛くなる

『オレからのプレゼントだよ』

ぺしゃり、と水の跳ねる音がしたと思えば私の風によって吹き飛ばされたはずの彼が笑みを浮かべて私を見下ろしていた。

『…ぷ、れぜん、と……?』
『じき分かる』
『まっ、……!』



『近いうちにまた会おう、その時はオレの誘いを受けてくれると嬉しいな。……っていうより、受けざるを得なくなるだろうけどね』






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