二時間ほど電車に揺られてやっと目的の駅に着いた。改札を抜ければこれから向かう山が古い民家の向こうに見えた。タクシーには乗らず徒歩で山へと向かう、11月下旬だから紅葉のピークは過ぎているけど所々朱色が残っていて冷たい空気とは逆に心を温めてくれる。

山の中に入って30分ほど歩いた所で洞窟が見えてきた。風のせいか洞窟の中には葉がたくさん入り込んで少し汚いというか、不気味な雰囲気を醸し出していたけど、それさえ片付けてしまえばさっきまでの不気味な雰囲気はどこへ行ったのか意外と過ごしやすそうに思えて少し感動してしまった。

来る途中にコンビニで買ったおにぎりを食べながら洞窟の中を見回してみる、最後にここに来てから何年も経っているのに、何一つ変わっていない。地元の子供たちが秘密基地とかに使っても良さそうなものだけど…今時の子供は外で遊ぶより室内で遊ぶ方が楽しいんだろうね、それにそっちの方が親的にも心配せずに済むし。

「最後にここに来たのは…家出した時だっけ…」

確か小学生の時だったと思う、何故両親は私に会いに来てくれないのかと、会いたいと私がわがままを言ってお手伝いさんを困らせたことがあった。誕生日も、授業参観の時も、病気の時も会いに来てくれない両親に寂しさと少しの怒りが火をつけて普段は言わないようなわがままに周りも困惑した表情を浮かべて私を見ていたのを覚えてる。今思えば申し訳ない気持ちになるけど、あの時は本当に寂しかったのだ。結局、周りがそれを理解してくれることも両親が会いに来てくれることもなかったけど。

――名前さん、迎えに来ましたよ

(誰にも行先を告げず一人でここに来たのに、何故か双熾だけは私を見つけてくれたんだよね…)

どうしてここが分かったのかって聞いたら「名前さんがどこに居るのか、僕には自然と分かるんですよ」なんて意味の分からないことを言われたっけ…そういえば、彼を意識するようになったのもその頃からだったような気がする。

「双熾…」

もう、彼は手紙を見つけただろうか。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -