冬の肌寒い空気は肌に染みる、一歩部屋の外に出れば冷気が体を包み込んで一気に体温を奪ってゆく、…あー、相変わらず寒ぃな。体を擦りながら廊下を歩けば真田忍隊の奴らが移動していくのが見えた
「そういや、今日は朝から猿見てねーな」
飯を運んできたのも猿じゃなくて忍隊の奴だったし…またオッサンの命令でどこか別に場所に行ってるのか…?ま、別にいいけど。
「あ、才蔵ー!」
「伊佐那海…?」
前から伊佐那海が歩いてくる、その手には手ぬぐいが数枚握られていた。こんな真昼間から風呂か?呑気な奴だな…小さくため息を吐きついているとその後ろにもう一人誰か居るのに気付いた。
「…誰だ、そいつ」
重く長い前髪は目を隠し身を包んでいる服はボロボロで体は汚れて傷だらけ、いかにも孤児という出で立ちにまた勝手に伊佐那海が連れてきたのかと思った俺は眉間に皺を寄せた。
「佐助が連れてきた子で、名前っていうの」
「アイツが…?」
「うん、今日からここ(上田)の一員だよ」
「はぁっ?!」
あのオッサンは何考えてんだ!ついこの間刺客を送り込まれて殺されかけたっつーのに…!佐助も佐助だ、どこの馬の骨かも分かんねーやつ拾ってくんなよ!!
「え、ちょっ、才蔵!?どこ行くの!?」
「オッサンの所に決まってんだろうが!」
「なんでそんなに怒ってるのよーっ!」
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「オッサン!」
「おー、才蔵か。」
俺が来ると分かっていたのか、オッサンは特に驚くこともなく呑気に茶を啜っていた。後ろ手で襖を閉めてオッサンの前に腰を下ろす、六郎さんは大声を出した俺を咎めることなくただ俺たちを眺めていた。
「どこの馬の骨かもわからねーような奴を城に住まわせるなんてアンタいったい何考えてんだよ!この前殺されかけたこと忘れたのか!?」
俺がどういう理由でここに来たのか分かっていたらしい、ドンッと床を殴ってそう言った俺にオッサンは小さく苦笑いして「予想通りの反応だな」と呟いた。
「笑い事じゃ「心配無用。名前、危なくない」
襖が開く、開けたのは佐助で森に行っていたのか頭に被っている布には土と葉がついていた。
「ハッ、心配無いだぁ?なんでそんなこと言えんだよ」
「見れば分かる。名前、安全」
「だから、その自信はどっから来るのかって「まあまあ、落ち着け」…オッサン!」
「名前の面倒は佐助に任せる。もし不穏な行動をとれば、その時は佐助が片付けること。それと才蔵、そんなに心配なら一度声をかけてみるといい」
「あ?なんでだよ」
「話してみれば何故心配無いと言えるのかお前にも理由が分かるさ」
そう言ってオッサンは茶を啜った。