「白石さんまだかな………」


ドキドキする心臓は静まれっていっても言うことを聞いてくれない。
けど、このドキドキは、嫌いじゃない……

って俺は乙女か!!!!

ガッと電柱に若干可哀相になった頭をぶつける。

「ね、君」

「は?」

ヤバッ今は女の子なんだから男声は駄目だろ!

「な、なんですか?」

「可愛いね、誰か待ってんの?」


………………これ、って


「……………恋人を待ってますあっち行ってください」

ナンパかよめんどくさいな!!


「そういってまた女友達待ってんだろー。ね、一緒に?」

「だからッ!俺は今大事な人を待って―――――」

「そうやで。アンタ等なんか相手する時間ないやんなぁ?」

ふわ、と後ろからあすなろ抱きをされて顔に血が集まる。

この声―――――

「しら、」

ちょん、と唇を指で触れられ言葉を遮られると同時に顔が暴発する。
ちょ、ま、ヤバい心臓ヤバい!
何この人超カッコイイ!!

振り向けば変装はしているものの、相変わらずイケメンオーラ垂れ流しの白石さん。
はあ、カッコイイ……



そんな白石さんを見ていたからナンパ野郎の腕からギシギシヤバい音が鳴ってるのは全く気がつかなかったけど。


「そんなに俺にケンカ売りたいんか……?悪いんやけど俺、あんまりナンパする奴好かないんやけどな……まあ、仕方ないよなぁ……?」

ギシッと本気で腕を折りそうか力が入ったところでヒィィィ!とナンパ野郎は悲鳴をあげて謝った。
それに満足したのかパッと手を離して白石さんは口パクであっち行けと言ってナンパ野郎を追い払った。

「大丈夫か赤クン?」

「全然平気ッスよ!」

「ならよかった……」

ほっとしたように言って白石さんに手を引かれ歩きはじめた。

「何や行きたいとこある?」

「えっと……」

「何でもええでー」

「じゃあ………テニスコート」

「お!テニスやりたいんやな!ええよやろか!」

「はい!」

ぶっちゃけ今の答えは女の子としては良くなかったかもしれない。
けど、一日なんだよ、一日。

我が儘くらい許してよ。



















パコーン、という音が響く。
俺の、専売特許。

だけど、

「ッ………!!」

「ええテニスしとるな、赤クン。けど、無駄多いのが残念や」

ぎゅっと手を握る。
ヤバい、白石さん本当に強い!



「もう一本お願いします!」

そういえばよしゃっ、と言って白石さんは構える。
やっぱりテニスが好きなんだな、白石さん。

本当に清々しく楽しそう。

うん、俺の選択間違ってなかった!!





















そんな時間がずっと続けばよかったのに。



































「!………そろそろ時間やな」

「……、え」

「赤クン、おおきに、凄い楽しかったで。久しぶりに気持ち良いことしたわ」

ンーッ絶頂ー!
と決めゼリフを決めた白石さんは、多分この世の誰よりかっこよくて、




俺の、二日のシンデレラが終了したということだ。
















「…………ごめんなさい」

「え?」

「本当にありがとうございました!!」

ガバッと頭を下げる。
言わないと、俺男なんです、って。
でも、それで、












嫌われたりしたら――――――







「本当に付き合わして……」

「ああそのことならええって。ホンマに俺も楽しかったから」



最悪、だ。
俺、大好きな人に嘘ついた。



「赤!」

遠くから聞こえた車の音に振り返ると謙也さんが手を振っていた。
カボチャの馬車みたいに、なんつって。




「白石さん、」

「ん?」

「大好き!」


それだけ言って走って謙也さんの車に乗り込む。

振り向いたら、びっくりしたような顔をした白石さんが立っていて、少し笑えた。






俺の、二日のシンデレラ終了――――

































あれから一週間。
元シンデレラの俺はというと―――


「ちょっと切原手伝ってよ!そこ掃除して!もう午後の部始まるんだから!」

「あーもう分かってんよ!」

ヒラヒラとしたメイド服を着た女子に命令されて渋々動く。

絶対俺のが似合うってんだよ。


はあ、とため息をついて喫茶店で働く。
今日は、ちょうど一年前、俺が女装癖に目覚めた日。
文化祭だ。



あの夢の二日がもう遠く感じるほど月日はあっという間で、残酷だった。

「はあ………」


ちなみに俺は他クラスで最近こんな変な噂をされていたことを知らなかったりする。

「な、なあ最近切原可愛くなったよな……?」

「あ、それも俺思ってた!」

「何つうかはかなげな花みたいな―――――!!!?」

















「「「……今物凄い殺気が」」」




















「………何か外が騒がしいような」

特に女子の悲鳴が凄い。

「んだようるさいな……」

人に働けうるさいくせに。
ぶつぶつ言いながら掃除を進行する。
と、ガラッと教室のドアが開かれた。





「………久しぶりやな、」

「……………え?」

「赤、也、クン」

夢、かと想った。
綺麗に美しく笑って、オーラが煌めいていて、けどとても優しい人。
俺の大好きな白石さん、が


「なんで………」



そこで俺の格好にようやく気づく。
俺は今、まさしく男だと出張している男子中学生の服を着ている。


俺が、女の子じゃないの、ばれ、ちゃった……

「ちょっと赤也クン借りるで」

そう女の子に営業スマイルを浮かべて俺を引っ張っていく白石さんの顔が、見れない。





















「……お、この部屋空き教室やん」

カラ、と人気がない校舎の空き教室に連れてかれ、お互いに静まり返る。

いわなきゃ、言わないと。

「あの、騙しててすんませんでした!」

絞り出すようにありったけの謝罪を述べ、ようやく白石さんの顔が見れた。

やっぱり、優しげに笑って俺の頭を撫でてきた。。
謙也さんといい勝負だよ。このお人よし。

「俺も、ゴメンな。」

「え?」

「俺気づいてててん。赤也クンが男の子やって。」

「ヘッ?!」

あまりの驚きに目をパチパチすると白石さんは申し訳なさそうに笑っていた。

「時々赤也クン男声出とったし。ナース服の傍らにあった服とか、がな。男物やったし…」

「じゃ、じゃあ気づいてたらなんで……!!」

俺がそういうとアアアアーと言って白石さんはその場にうずくまった。

「………一目惚れやってん」


顔を赤くして伺うように言ってきた白石さんに一気に顔に熱が集まる。
ちょ、いや、ま、嘘だろ……!!?

「赤也クン、の俺への好き、は、違うんかな……?」

捨てられた子犬のように駄目押しをしてくる白石さんに胸を貫かれる。

くそ、イケメン凄いなぁ……




「……同じ意味で好き、ッス。」

そういうや否や白石さんに抱きしめられ、た。

「愛してるで赤也クン」

俺は、外の騒がしい文化祭を背景に優しく口づけをされ、俺も応えるように白石さんの背中に腕を回した。





好き、好き、大好き。




































「雰囲気ぶち壊したろか……」

「やめいや光。白石は構わず続けて可哀相な想いすんのは赤也なんやからー」

「……謙也さんのお人よしぶりにはホンマ呆れますわ」

「オイ!!何て言うたい、ま…………」

ふわ、と鳥の羽に口づけるように謙也の唇を掠め取り、光は拗ねたように言った。


「………俺やって謙也さんとイチャイチャしたい」

「………しゃーない奴やな!」

照れたように笑った謙也に、財前はまた優しく口づけを贈った。


扉を挟んだ向こうに、こんな出来事があるとも知らずに、俺と白石さんは愛し合いを繰り返していた――――――――
























貴方は俺のミュージシャンじゃなくて恋人!


























―――――――――――――

 楽 し か っ た !!

白赤ちゃんと打ったの始めてだけど!
めちゃくちゃ!!!
楽しかった!!


多分このあとホテルに謙也を連れ込みたい光に白赤の愛し合いは強制終了させられます(笑)







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