「お前おかしいやろ男として!!!!!」
俺は元来、女性恐怖症で、女の人が苦手や。
平気な女性はこの世には母と祖母しかいない。例え従姉妹やろうと叔母やろうと俺は女の人に触られるだけで泡を吹く。
昔から、何があったとかトラウマがあるとかやなくて、最早これは生れつきの個性と考えるようにしとる。
やって0歳の時、叔母や従姉妹に抱かれた瞬間、大泣きした挙げ句に、泡を吹いてぶっ倒れたんやからもうトラウマとかそういう話やない。
言うなれば特性や。
やから、小学校という何とも女性恐怖症の俺にとっては恐ろしい関門をくぐり抜け、男子中高大のエスカレーター式の学校に入学、電車とかバスで女の人と触れ合ったりせんように男子寮に入り、俺はもう女の人と関わらぬ幸せな生活をenjoyして4年目。
高校二年生となり、このまま幸せな生活を続ける―――はずやった。
「謙也ー!一緒にAV見いへんか?」
「ッ……な、なな!む、無理や無理無理無理無理!!パス!!お前らだけにしろや!!おつまみとか食べたいんやったら部屋番教えてくれや!!後で部屋の前に置いたるから!!」
「いや、只単に謙也やって溜まってるやろ?何ならお手伝いしたるでーって話や」
にま、と怪しい笑みを浮かべた寮の友達に顔が引き攣る。
アカンそんなん勘弁して!!何で草食系男子は肉食系男子に狙われるんや!!
「そりゃあ男子寮の男にしちゃオカズにできる男子の一人やからなー。」
「白石ィィィィイ!!!」
後ろから響いた救いの手ならぬ救いの声に導かれるように俺は声の主の後ろに隠れた。
白石が俺の心を読むのは日常茶飯事やからスルーっちゅー話や。
「ほれ、それくらいにしたりやー。謙也は皆と一緒に見るAVなんかや反応せえへんねん。昔から俺が一緒やから目が肥えとるねん」
「白石寮長!」
にこ、と男女共に見とれてまう笑顔を浮かべた白石に、仕方なさそうに肉食系男子達は俺を誘うのを辞めた。
ああ危なかった………
「大丈夫か?謙也」
「へ、平気っちゅー話や……大丈夫や、大丈夫。成せば成るねん」
「いやいや顔面蒼白やし」
白石が苦笑いを浮かべて俺に囁く。
「AVなんか見たら嘔吐して泡吹いてぶっ倒れてうなされてまうもんなー?」
「う……うっさいわアホ!」
真っ赤になって怒鳴る俺に白石はさも愉快そうにケラケラと笑った。
何ともマヌケな話だが、俺はどうやら女の人の存在自体ダメなようで、昔侑士と白石と共にAVを観賞した際、俺は嘔吐した挙げ句、泡を吹いてぶっ倒れ、丸一日うなされたという前科があったりする。
ちなみに侑士というのは俺の従兄弟で、俺と真逆―――
つまりは女好き(更に詳しく言えば女タラシ)。
ほんま、同じ血が流れてるとか思えへん従兄弟やで。
「………ここが、男子寮、か……」
そんな俺の日常生活崩壊まであと―――
「はいはい皆お静かにしてやー!!」
パンパンと手を叩いた白石が皆の注目を集める。
夕飯時、俺はちょうど炊事当番として学食のおじさんを手伝っていたとこやった。
「今日も皆お疲れ様やったな!男子しか居ない学校生活を中々に楽しんで暮らしとるな!!」
嫌らしさ全開で言った白石に男子はげんなりとした顔をした。
女子がいると居ないでは学校生活の花が違うだの何だのやんややんやと文句の嵐。
男子達は居なくなって始めて女子のありがたみが分かったらしい。
ちなみに俺はありがたみ何てものは母親と祖母のみや。
ぶっちゃけ女の子は俺的にはいないで貰わないといけない。泡を吹く。やから女の子居なくても平気なように家庭的になったんや。
「そこで皆の為に俺が女装したる――!!といつもなら言ってたとこやけど、今日から三ヶ月はそんな必要ないで!出てきてや光!!」
ピタリと固まった俺。
とざわつく食堂。
ゆっくりとドアから現れたのは、美しい黒髪をセミロングまで伸ばし、透けるような白い肌を惜し気もなく晒し、ツンとした綺麗な形を象った瞳をたずさえた―――――
女子、やった。
「ぎ、「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
俺の悲鳴は、男子寮の男子達による歓喜の叫びに掻き消された。
とりあえず待って!一旦落ち着こう!!ほんまに待って!!!!!!今荷造りするから!!!!!
「謙也ーお前が落ち着きやー」
「実は光ちゃんはこの男子中学校の近くにある共学校の子やねん。共学校の寮にこの春から入る予定やってんけど学校側のミスで部屋が無くなってもうてん。やけどちょうど新しく建てられる寮が三ヶ月後に出来るらしいから、三ヶ月後にそこに入るんやけど……問題はその三ヶ月や。光ちゃん、その三ヶ月間住む家ないねん」
しん、とした食堂。
誰もかもが目をキラキラさせて財前光を見つめていた。
「やから三ヶ月。光ちゃんにはこの寮に住んで貰います!!」
白石の言葉を皮切りにドワッと食堂は阿鼻叫喚の騒々たる騒ぎになった。(女の子から見たらただの地獄絵図やったろうに)
「うっっっさいねん静かにしろや」
可愛らしい女の子の第一声は何ともドスが効いたかわいらしい高い声やった。
男達は興奮して、『踏まれたい!!』『けなして!!』『罵って!!』と叫び、財前光は毒が効き過ぎた言葉を舌に乗せて男達にプレゼント。
俺はというと、糸が切れた操り人形のようにへなへなとその場に崩れ落ちるしかなかった。
………女の子、怖い。
「っ………!?何でやねん!!!」
「いや、開いてたのがそこの部屋しか無かったし。」
「じゃあ白石代われ!!いますぐ代われ!!」
「嫌やめんどくさい。大体寮長っていう権利から俺の部屋他の部屋に比べたらええ部屋やから代わりたない」
「お前いっぺん地獄に堕ちろや!!!」
只今隣の角部屋に財前光が入ると聞いて俺は全力で抗議しとるとこである。
「大体男子寮に女の子とか危なすぎやろ!!男は皆狼なんやで!!」
「いや、謙也は狼やないやろ。しいて言うなら柴犬やな」
「柴犬かあ〜かわええよなあ!!……って何でやねん!!」
「よっ、ノリがいいねー謙也さん!!」
「ノせんなや!!」
白石とバカみたいな(全く進まない)やり取りを繰り返していると、カチャ、と開いた扉。
ちなみに俺は自分の部屋の扉の前に立っている。ので、開いた扉は只ひとつ。
「お、やっほー光ちゃん」
「………白石さん」
財前光の部屋、つまり出てきたんは財前光、イコール女や。
「ししししし白石いいい、おおお俺っへへへ部屋帰るなななななー」
先手必勝!!と言わんばかりにドアノブを掴んだ。が、
「ごえっ」
次の瞬間思い切りTシャツの衿を引っ張られ、何とも情けない声を俺はあげて咳き込んだ。悪魔かコイツ!!
「まあ立ち話もなんやし、光ちゃん部屋あげてえな」
「……しゃーないッスわ」
俺をほうり出してさっさと財前光の部屋に入る白石。
男から見りゃうらやましい限りなんやろうけどなぁ!!
俺は扉の向こうで蛇と豚が一緒グチャグチャに煮詰まって動き出しとると聞いた時くらい入りたないわ!!
「……大丈夫ッスか?」
「平気平気平気平気平気、平気やから近づかんで下さいお願いします」
「……何でですか」
ペたりと俺に向かって少し足を運ぶ財前光にザザザザと背筋が凍ると共に完全に俺は硬直してしもた。アカンアカンアカンアカンアカンアカンアカン!!!!死ぬ!!死ぬ死ぬ死ぬ!!!死ぬゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!
「ほら、行きましょうよ」
ぐいっと引っ張られた腕。
俺は目の前が泡が弾けるようにスパークし、思考停止後気絶…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………せんかった。
「…………え?」
「…………何ですか?」
俺は元来、女性恐怖症や。
女性に触られればたとえどんな美人やろうと不細工やろうと泡を吹いて倒れる。
それは、絶対に代わらん俺の生まれ持った特性。
やから、やから――――
「………本当に、女?」
「え―――」
「オイコラてめぇ謙也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
突然響いた大声にびくりと身体が跳ねる。
振り向けば男子寮のほとんどの男子がワラワラと現れた。
お前ら何やってんねん。
「確かに謙也を手だけで起こせるくらい力あるけどな!!やからって本当に女?は失礼やろ!!」
「え?あ、いや!!そうやなくてやな!!」
「ふざけんなや謙也部屋代われ!!」
「そ、それは大歓迎やけど、「ダメやで〜?」
がしっと肩を捕まれるとにまりと笑う白石が一人。
何やねんほんまにコイツは!!
「女の子にとって謙也ほど安全な男は居ないっちゅー話や」
「白石それ俺の口癖………」
「分かったら部屋に帰り!!帰らな二度と光ちゃんに近づかせんで!!」
その言葉にこの世の終わりだと感じるような恐怖を覚えたのか、男子達は次々に自室に転がるように逃げ帰っていった。(何人かこけとったから後で救急箱持ってたろう。)
お前らそんなに女子が欲しいか。
「………相変わらずッスね白石さん。そのカリスマ性」
「当たり前やろ。………さて、やっぱり謙也には分かってもうたか」
「ふえ?」
分かってもうたって何や。
つか何で俺は財前光の部屋に居るんや。いや白石に連れ込まれたんやけど。てか財前光の部屋女の子にしちゃ殺風景過ぎやな……いやでもこんなもんなんか?
「この人、ほんまに人間ですか……?」
「普通の人間や。ただ異常な女性恐怖症なだけで」
「ああ、なるほど……」
白石と財前光に同時に視線を向けられ身体が固まる。
いやいやいや。美人さんは目力半端やないんやから控えようかお願いやから。
「謙也、ここからの話は、一切他言無用やで」
「なにが――――」
白石に問う前に、パサリ、と綺麗な黒髪のセミロングが床に転がる。
一緒に小さなマイク……みたいなものも。
「………え?」
「あーめんどくさい」
ガバッと床に転がった異常物体から目を離して慌てて顔をあげる。
俺の耳に届いた低音で、それでいてけだるそうやけども、ハッキリした声。
濡れた白いタオルで仕上げと言わんばかりに覆われとる顔。
短くも、光が当たると、緑が混じる綺麗なツンツンとした短い黒髪。俺の家系も不思議なことに黒髪に青が混じるんやけど、緑っちゅーんは珍しい。
ばさ、と白いタオルが取られた顔は、美しい造形をかたどっていたが、その顔つきは、間違いようもなく、男、やった。
「………………………」
「いやー、やっぱり謙也の女性恐怖症はだてやないなあ。ここまで完璧な財前の女装見抜いたんやし、さすがは俺が見込んだ「白石君白石君。歯ぁ食いしばれ。」
とりあえず丁重に俺は白石君の頬から爆音を響かせた。
「どういうことかな白石君。一から十まで説明するよなあ?」
「おん。する、するからその振り上げた机を降ろしてや」
「お前の頭に降ろしたろか!!もし男子寮にいる男子が知ったらむせび泣きどころか暴動起きるぞ!!寿命縮むぞ!!ショック死するぞ!!」
「白石さんにこんな態度取れる人始めて見たわ……」
俺が白石の顔を殴りつけて白石が『絶頂〜!』と言いながらクルクル回るという一悶着後、三人で輪を作るように部屋の中心に座ると、白石は咳ばらいして説明を始めた。
「まあ、アレや。財前光っちゅーんは正真正銘男で、俺の実家のご近所さんで……まあ、幼なじみみたいな感じやねん」
「へーそうなんやー。で?」
「いや、な。やから財前がその寮のトラブルに巻き込まれたって聞いて放っておけんかったや」
「へーそうなんやー。で?」
「や、やから、学校にも通える距離やし、空き部屋あったから財前を寮に招いたんや、うん。」
「へーそうなんやー。で、何で女装してんねん。白石がさせたってんなら俺は殴る。今度は全力で」
ギリリッという音が響いた俺のグーに白石はハハハ、と渇いた笑いを漏らした。
これでも俺は男や。女性恐怖症なだけで、女性が絡まない面なら多分、男前やと思う。
「あー、女装した理由は只単に俺が潔癖症やからッスわ。」
「は、はあ……?」
「ほら、白石さんとかアンタはまだ清潔やけど、男子寮にいる男子ってみんな汚いしむさ苦しいし生々しいし。ぶっちゃけ俺ああいうの無理ッスわ。男同士の気持ち悪い裸の付き合いもしたくないし、女子(仮)でも居れば少しは清潔になると思ったし、めんどくさい事少なくなると思って」
「それに寮に女の子とか青春って感じやし!!それに女装した男が男子寮に入るっていう状況が面白いし!!」
とりあえず白石は床に沈めた。
コイツがおかしいのはいつものことや。
「……………………………ひとつ言わせてくれ」
「はい?」
「アレか!!とりあえず何やねんお前は!!!
潔癖症?
女装?
むさ苦しい男が苦手?
生々しいのが無理?
「お前おかしいやろ男として!!!!!」
「いやアンタも大概やろ」
Happening1!!
あの子は可愛い(女)フリした潔癖症(男)!!!!
――――――――――――
ていう話です\(^o^)/
謙也は女性恐怖症な家庭的な男前
財前は潔癖症で女装が平気なゴーイングマイウェイ
白石は寛容過ぎてノリが良すぎる兄貴肌
ってな三人がコンセプト。
ちなみに出るか不明ですが
侑士は女好きの男が苦手なタラシ
ですかね←
楽しいですこういう状況。
私パロ大好きなんです。
てか今回光謙要素少ねェ←